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【書評】今も続く「思想戦」の歴史 石平著『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたのか 「脱中華」の日本思想史』

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今も続く「思想戦」の歴史 石平著『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたのか 「脱中華」の日本思想史』

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石平著『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたのか』 1/1枚

 韓国人は、なぜいつまでもヒステリックで理不尽な「反日」を続けるのか? 問題は複雑なようで単純ではないか。キーワードは、かの民族にDNAのごとく染みついている「儒教思想」の華夷(かい)秩序である。自らが世界の中心(小中華)であり、野蛮な化外(けがい)の民(日本)なんかに、でかいツラされてたまるか、と。その韓国の儒学者から「現在、儒教の影響が一番色濃く残っているのは、ほかならぬ北朝鮮だ」と聞いたことがある。なるほど、「公」がなく「私」(一族)の繁栄のみを願い、その独裁者は「徳」があると嘯(うそふ)く。もちろん本家の中国だって負けちゃいない。本紙連載コラム「China Watch」の筆者でもある石平氏は、習近平国家主席の神格化が進み、まるで「天」から民を支配する「命」を受けた皇帝のごときだ、と指摘している。

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 つまり、東アジアの国々の中で、日本だけが「儒教思想」の呪縛から抜け出して、明治以降、いち早く近代化を成し遂げ、現代の繁栄を築くことができたのだ。本書には、儒教VS日本における、すさまじい「思想戦」の歴史が綴(つづ)られている。

 朝鮮半島を経由して、儒教が日本に入ってきたのは、5世紀から6世紀にかけて、とされる。だが、当時の日本の為政者は、儒教の受容は限定的にとどめ、ほぼ同時期にもたらされた仏教の方を情熱的に取り入れた。中国・隋の時代に始まった官吏登用試験「科挙(かきょ)」も日本は導入していない。その結果、儒教思想のペーパーテストをパスした者のみが支配層になれるという硬直化かつ、原理主義的な制度を排除できたのだ。

 危うかったのは江戸時代である。徳川幕府は、儒教の朱子学を「官学」として奨励した。だが、自然万物に霊力と神が宿るといった日本の伝統的精神と相いれない朱子学は、民衆の心をつかむことができず、やがて日本古来の伝統や精神を重んじる「国学」に打ち破られてゆく。

 思想戦は今も続いている。中朝韓とは根本となるものが違うのだ。それを理解するのに格好の指南書である。(PHP新書・880円+税)

 評・喜多由浩(文化部編集委員)