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【書評】ジャーナリスト・堤未果が読む『危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実』 日本は本当に独立しているか?

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ジャーナリスト・堤未果が読む『危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実』 日本は本当に独立しているか?

書評更新
『危機にこそぼくらは甦る 新書版 ぼくらの真実』 1/1枚

 史実をひもとくことの価値とは何だろう?

 それは先人たちの置かれた立場を、今を生きる私たちが理解し、より善(よ)き未来を選択するための羅針盤ではないか。既刊『ぼくらの真実』の増補版である本書は、そんな確信を与えてくれる、読み応えある一冊だ。

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 主権、憲法、民主主義、国連憲章、朝鮮半島危機に拉致被害者、沖縄学徒隊、女性宮家問題…。ともすれば感情論やイデオロギー論争に流れてしまう重いテーマが、現場の証言や歴史的事実、宗教的見地とともに並べられてゆく。

 徹底した現場主義を貫く著者は、一つ一つについて自ら検証した事実を差し出しながら問題提起することで、読者の側に、深い思考と立場を超えた議論を促してくる。

 「日本は独立しているか?」

 教鞭(きょうべん)をとる大学で著者は、毎年春になると新入生に聞くという。国とは何か、主権とは一体何をさしているのか、この普遍的な問題と向き合う際の必須条件は、過去に何が起きたのかを、思いこみでなく事実として知ることだ。

 例えば日本国憲法の原文と和訳を比較すれば、そこにある矛盾のなかに見え隠れする、時の政府の思いに気づくだろう。国連を単に信奉するのではなく、その成り立ちをたどることで、戦勝国の特権と、いまだ敵国指定国の日本が主権を取り戻すことの重要性がわかるはずだ。

 王族が住む宮廷と違い、民の襲撃から守るための堀も高い塀もない京都「御所」の存在は、民が主である「ジパング・デモクラシー」そのものだと著者はいう。そしてまた、個を尊び和を求める「十七条憲法」の哲学や、私利私欲でなく他人のために生きよとする「葉隠(はがくれ)」の武士道など、日本に本来あった利他の理念こそが、世界を救う鍵になるだろうと。

 官僚支配の日本政治に希望をもたらすには、官僚たちをうならせる専門性に加え、〈捨て身の志〉を持つ人材を政界に投入せよという提言も同様だ。本書を通して行間に見え隠れする〈葉隠の美学〉を礎に、日本人として今やるべきことを深く広く考えたい。(青山繁晴著/扶桑社新書・880円+税)