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「絶望本」続々 哲学エッセー、書評、名言集…否定的な箴言に共感?!

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「絶望本」続々 哲学エッセー、書評、名言集…否定的な箴言に共感?!

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“絶望本”に収録された言葉 1/1枚

 絶望を生きる、絶望に効く、絶望手帖…。タイトルにあえて「絶望」という否定的な言葉を冠した本の刊行が相次いでいる。冷厳な哲学エッセーや書評集もあれば、ツイッターでの悲痛な叫びを収めたものも。明るく前向きな姿勢が称揚されがちな世の中で、悩みや不安に一度どっぷり浸ることの意外な効用に視線が注がれている。(海老沢類)

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 自分の人生を、他人のせいにするな-。帯の刺激的な文句が目をひく『絶望を生きる哲学 池田晶子の言葉』(講談社)は5月に刊行され、すでに5刷。部数も1万2千部に迫っている。

 熱い感想…

 考える営みを、平明な日常の言葉でつづる「哲学エッセー」という分野を切りひらいた池田晶子さんの箴言(しんげん)集。平成19年に、がんのため46歳の若さで亡くなった池田さんの没後10年に合わせて新たに編まれた。

 「熱い感想がびっしり書かれた読者はがきが多く届く。年齢層も10代から高齢者まで幅広い」と担当編集者の見田葉子さんは言う。

 〈日常とは、明日死ぬ今日の生〉〈救いというのは、ありのままの事実を認めること〉…。現実を直視するよう促す厳しい言葉の中に、〈絶望するということすらも、じつは人生の暇つぶしなのである〉という卓見がふっと差し挟まれる。見田さんは「優しくなぐさめるような言葉ではなく、深い洞察力から来る強い言葉で物事の根源を問い直す。どんなひどい時代でも視点を変えれば絶望する必要はない-という池田さんのメッセージが広く共感を呼んでいるのでは」と話す。

 一方、6月に出た『絶望に効くブックカフェ』(小学館文庫)はノンフィクション作家、河合香織さんの書評集。扱うのは古今東西の小説から絵本、ノンフィクションまで幅広い。同書の元となる連載が始まったのは東日本大震災の記憶が生々しかった23年秋。「絶望は列車の駅と同じでいつか必ず現れるもの。でも本を読めば視野は広がり、自分の抱える悲しみや苦しみだけが特別なものではないと思える」と河合さん。震災後の人々の心の空白に寄り添いたい、との思いも異色のタイトルには込められている。