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温又柔さん新作「真ん中の子どもたち」 私の思い書き尽くす

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温又柔さん新作「真ん中の子どもたち」 私の思い書き尽くす

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温又柔さん 1/1枚

 台湾生まれの作家、温又柔(おん・ゆうじゅう)さん(37)の新作『真ん中の子どもたち』(集英社)が刊行された。日本、台湾、中国-三つの国・地域を舞台に自身の生き方を模索する若者たちの姿を鮮やかに描いた本作は、今夏の芥川賞候補にもなった話題作。温さんは「精いっぱい自分の思っていることを書き尽くした」と語った。

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 本作は、日本人の父と台湾人の母の間に生まれた女性・琴子が主人公。中国語を学ぶため留学した上海の語学学校でさまざまなルーツをもつ若者たちと出会う。「母語」とは何か、「国境」とは-。琴子は悩みつつも、自分なりの答えを見つけていく。

 執筆にあたり、日本語や台湾語混じりの中国語など、各言語の持つニュアンスにこだわった。構想に4年ほどかけ、「物語が立ち上がるまで7回くらい書き直した」と苦笑いする。

 温さん自身、「母語とは何なのか」を考え続けてきた。台湾で生まれ、3歳のとき家族と来日。台湾語混じりの中国語を話す両親のもと、日本語で教育を受け育った。物語の主人公と同様に20歳のころ上海に留学。その際、「自分は何者なのか」と葛藤したといい、この経験が今作を書く原動力の一つになった。「日本語、中国語の両方から欠落感を感じていたとき、『あなた自身を表現できますよ』と私を手招きしてくれたのが文学でした。今も日本語は母語というより、『根を下ろしている』という感覚が一番しっくりきます」と話す。

 平成21年にデビュー。27年には『台湾生まれ 日本語育ち』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した温さん。「今後も読んだ後に『希望のかけら』を感じてもらえる文章を書ければ」。柔らかな笑顔で意気込んだ。(本間英士)