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道尾秀介さん「スタフstaph」 初の女性主人公「個人的な挑戦だった」

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道尾秀介さん「スタフstaph」 初の女性主人公「個人的な挑戦だった」

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 ベストセラー『向日葵の咲かない夏』などで知られる直木賞作家、道尾秀介さん(41)が新作ミステリー『スタフ staph』(文芸春秋)を刊行した。平成16年のデビュー以来、自身の長編で初めて女性を主人公にしたという道尾さんは「個人的な挑戦だった」と話している。

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 夫と離婚後、ランチワゴンで料理を売って生計を立てる32歳の夏都(なつ)。営業中に見知らぬ男に拉致され、連れて行かれたマンションの一室で女子中学生のカグヤから、携帯電話に保存された昔のメールを消去するよう要求される。メールにはカグヤの姉で有名女優のスキャンダルが記されているという。

 女性を主人公にした長編に初めて挑んだ心境について、道尾さんは「女性ならではの繊細さや力強さといった部分を、主人公が抱えるつらい過去と対峙させながら描いてみたかった」と説明。「ごく身近にいるような普通の女性で、自分の力で必死に生きている働く女性がいいなと思った」

 作品の舞台となるランチワゴンのアイデアは趣味が高じたものだった。「僕は自分で釣った魚をさばいて食べるほどの料理好きだから、今回は料理のシーンを物語に絡めたかった。でも家庭料理を描くと主人公の目から見える情景は固定されてしまう。そこで街で見かけるランチワゴンを思いついたんです」

 偶然にも芸能界を揺るがすスキャンダルを知ってしまった夏都は、その流出を防ぐため甥っ子の智弥とともにカグヤに協力することになるのだが、意外な事件に巻き込まれていく。

 スピード感あふれる軽快な文章で物語はテンポよく進む。一方で、毎日を懸命に生きる夏都だけでなく、海外で働く母親と離れ夏都に預けられた智弥、両親に子育てを放棄されたカグヤの抱える孤独や寂しさも浮き彫りに。作中に描かれた2人のなにげない言葉が衝撃のラストへとつながっていく。「この作品は少年少女が大人になるまでの過程を描いた成長の物語でもある。智弥とカグヤは表も裏も併せ持つ生身の人間。そんな2人が苦しい現実の中、必死に立ち上がっていく姿も書きたかった」

 タイトルの『スタフ』という言葉は作中に一言も登場しないが、物語の行方を暗示する重要な意味を持つ。「スタフの意味は英語でブドウ球菌。最初はごく小さなものがどんどん増殖し、やがては取り返しのつかないほど大きくなってしまう。本当に小さな心の傷とか、小さな悪意のモチーフとして使いました」(高橋天地)

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【プロフィル】道尾秀介

 みちお・しゅうすけ 昭和50年、兵庫県生まれ。玉川大卒業後、平成16年に『背の眼』でデビュー。『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、『月と蟹』で直木賞を受賞。

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