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【広角レンズ】ITが変える!?小説 執筆支援ソフト、文豪は人工知能

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ITが変える!?小説 執筆支援ソフト、文豪は人工知能

広角レンズ更新

 「もっと面白い小説を書きたい」「もっと面白い小説を読みたい」-。こんな願望を情報技術(IT)を使って実現させようという試みがある。小説執筆を支援するソフトの開発や、人工知能(AI)に小説を書かせるプロジェクトが進み、すでに文学賞に応募した作品もある。ITの進化で今後、コンピューター小説が量産されるのか。(村島有紀)

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プロットを作る

 「創造は人間の特権。技術がいくら進化したとしても、コンピューターには創造はできない。でも、物語を書く手伝いをさせることはできる」と話すのは、芝浦工業大情報工学科の米村俊一教授。

 米村教授の研究室は昨年、卒業生で『100回泣くこと』などで知られる作家、中村航さんと共同で小説執筆支援ソフト「ものがたりソフト」の開発に成功した。中村さんが小説を書くときに頭に浮かんだことを全て言葉に出してもらい、アイデアの生成から執筆に至るプロセスを整理することで、書き手の思考をシステム化した。具体的には、「主人公の名前は?」「物語が動き出すきっかけは?」など、画面に出る質問に答えていくと、プロット(小説の設計図)ができる仕組み。

 中村さんは昨年10月、このソフトで作ったプロットを基に、友人の作家、中田永一さんと合作小説『僕は小説が書けない』を発表した。「ソフトが司令塔の役割を果たした。2人が交互に書くことで、バトルをするような相乗効果で面白い小説が書けた」と振り返る。

 同研究室は今年、同ソフトに改良を加えた「あらすじ創作アプリ」を開発。文章のひな型に沿って主語や述語、副詞などの言葉を順にあてはめていくだけで、初心者でも波瀾(はらん)万丈のあらすじを作ることができる。米村教授は「アイデアの卵があっても普通の人はなかなか言語化できない。将来はスマホやタブレットに入れたソフトを使い、誰でも簡単にプロットの作成から小説の執筆までできるようにしたい」と意気込む。20代後半にパソコンが普及したことで小説を書き始めたという中村さんも「ITがなければ僕は小説家になっていなかった。支援ソフトを使って、一人でも物語を書き上げる人が出てくれば素晴らしい」と話す。

星新一賞に応募

 囲碁や将棋などの分野でAIを研究する松原仁・公立はこだて未来大教授は3年前、名古屋大や東大などの研究者とともに、AIを搭載したコンピューターに短編を創作させる「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」をスタート。今年9月には、AIを利用した初の作品を第3回星新一賞に応募、年明けの選考結果を待つ。「AIにも、人間の感性や芸術を扱えることを示したい」と松原教授。

 同プロジェクトでは、SF作家の星新一さんが得意とした400字詰め原稿用紙十数枚程度の「ショートショート」を“教材”にしている。星さんが書いた約千作品をコンピューターで分析し、単語の種類や文章の長さ、句読点の数などの特徴をAIに学習させ、それらを組み合わせるなどして新たなショートショートを生み出すことが目標。

 人工知能分野の研究は近年画期的な進化を遂げ、チェスでは1997年にコンピューターが世界チャンピオンを破り、将棋でもプロ棋士レベルに達している。

 しかし、人間の感性に挑む小説執筆はさらに困難なチャレンジともいえる。実際、「コンピューターは長い文章を作るのが苦手。長ければ長いほど、統一性のある読みやすい文章を作るのは難しくなる。今回の応募作品は必要最低レベルの文章で、受賞の可能性は低い」と松原教授。そのうえで、「研究を進めれば遠い将来、1億人に1億通りの好みに合わせた小説がAIによって書かれ、毎朝自分のスマホに、物語の続きが届く日が来るかもしれない」と夢を語る。