産経ニュース for mobile

【経済インサイド】ワイン、チーズではなかった!日欧EPA交渉で最後まで揉めた話題の関税品目とは?

記事詳細

経済インサイド

ワイン、チーズではなかった!日欧EPA交渉で最後まで揉めた話題の関税品目とは?

更新
1/5枚

 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が平成29年12月に妥結した。交渉で最後まで難航したのは、日本が輸入する欧州産ワインやチーズの関税撤廃に向けた協議とされる。だが、日本の食卓を彩るこれらの品目以外に、同年7月の交渉の大枠合意直前まで妥結点を見いだせなかった“ある農産品目”があったことはあまり知られていない。日本の交渉官を最後まで悩ませたその品目とは…。

<< 下に続く >>

 「この農産品目も関税を即時撤廃するリストに加えてほしい」

 29年4月に東京都内で開かれた日欧EPA交渉の首席交渉官会合。ワインやチーズなど農産品についての関税交渉にメドがつきそうになった頃、突如としてEU側の交渉官がある農産品の関税撤廃を日本側に求めてきた。

 その品目は確かに、ここ数年でEU加盟国のイタリアから日本への輸入金額を増加させる大きな要因にもなっていた。「米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)が裏でロビー活動を展開していたようだ」。日本側の交渉官はEU側の狙いをすぐに察知した。

 その品目とは、日本で大ヒットしている「加熱式たばこ」を指す。煙や灰が出ず、火を使わない利便性や先進性が受け、世界的に愛煙家の切り替えが進む次世代たばことして、日本を中心に普及が進んでいる。

 その先駆けとなったのが、PMIが26年11月に日本で発売した加熱式たばこ「iQOS(アイコス)」だ。アイコスは現在、世界20カ国で販売されているが、売り上げの9割以上を日本が占めている。将来的に全ての紙巻きたばこの加熱式への切り替えを目指す同社が、関税撤廃を働きかけた理由は明白だった。

 通常の紙巻きたばこは、葉タバコを燃やして煙を吸い込むが、加熱式たばこは電気で葉を蒸して発生する蒸気を吸って香りを楽しむ。加熱用ホルダーに専用たばこ「ヒートスティック」を差し込み、内部の金とプラチナの板で加熱して発生した蒸気を吸うという方式である。

 米国に本社を置くPMIだが、実はアイコスのヒートスティックの生産拠点はイタリアにあるのだ。日本の財務省の貿易統計によると、アイコスの名古屋での試験販売が始まった26年は、ヒートスティックを含む「パイプたばこ、その他」のイタリアからの輸入金額は7591万円にすぎなかった。

 だが、12都道府県で販売が開始された翌27年は24億614万円に拡大。さらに全国発売を開始した28年は502億9723万円となり、わずか3年で輸入額は662倍に急成長した。農林水産省のある幹部は「本来なら緊急輸入制限(セーフガード)の発動も考えるべき案件だ」と指摘する。

 加熱式たばこは関税分類上、「手巻きたばこ等」に分類され、3.4%の関税が課されている。

写真ギャラリー

  • 米フィリップ・モリス・インターナショナルの加熱式たばこ「アイコス」の本体と専用たばこ
  • 日本たばこ産業の加熱式たばこ「プルーム・テック」の専門店=東京・銀座(春名中撮影)
  • 英ブリティッシュ・アメリカン・タバコの加熱式タバコ「glo(グロー)」
  • フランスの酪農家は、日本市場に熱視線を注ぐ(ロイター)