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【一筆多論】毛沢東の手法を下敷き 習近平路線の危うさ認識せよ 宇都宮尚志

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毛沢東の手法を下敷き 習近平路線の危うさ認識せよ 宇都宮尚志

一筆多論更新
 中国人民解放軍の施設を視察し演説する習近平国家主席=11月、北京(新華社=共同) 1/1枚

 中国は半世紀前と同じ道を歩もうとしているのか。

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 先月、明治大学博物館で開催されていた「中国革命宣伝画展」をのぞいた。

 新中国誕生から文化大革命期までを対象に、紅衛兵に接見する毛沢東、毛沢東思想に万歳する民衆などが描かれたポスターや、毛沢東バッジ、著作などが展示されていた。

 パンフレットによると、革命宣伝画は「中国共産党の正統性を宣伝するとともに、最高指導者の毛沢東を唯一無二の存在として称揚し、その思想を普及させるための政治的な増幅装置だった」とある。

 中国共産党史観に基づいて善(毛沢東、共産党、無産階級)と悪(国民党、日本軍、資産階級)を明確に区別して描き、人民を教化・支配していく手法は、文革の混乱と狂気のなかで頂点を迎えたという。

 いま、中国では習近平国家主席の個人崇拝が強化されている。毛沢東思想と同様に、習近平氏の指導思想を憲法に盛り込むことが党中央委員会総会(2中総会)で決議された。

 さらに、中学校の歴史教科書が改訂され、1981年に全面否定された文革の項目が削除されるという。

 権力闘争の拡大も指摘されている。習近平氏は「反腐敗闘争」を強化することで政敵を排除してきたが、「犯罪集団」(黒社会)の撲滅を掲げて全国的な「掃黒除悪闘争」を開始した。

 こうした一連の動きは、新たな「文革」の発動にも似ている。独裁強化や思想統制、「反動勢力」に対する弾圧などは毛沢東の手法を下敷きにしたものだ。

 「毛主席に反対し、毛沢東思想に反対する者がいれば、全党こぞってこれを糾弾し、全国をあげてこれを討伐する」(第9回党大会政治報告)という方針が、習近平氏に名前を変えて蘇(よみがえ)りつつある。

 しかし、そうした中国に警戒感を示す国は少ない。欧州をはじめとして中国の経済力に目を奪われ、実利を優先する姿勢ばかりが目立っている。

 1月初旬、フランスのマクロン大統領は企業経営者50人以上を連れて訪中。習近平氏が推進する広域経済圏構想「一帯一路」への参加を表明した。

 同月末にはイギリスのメイ首相が訪中し、総額90億ポンド(約1兆4千億円)の経済協力を結んだ。メイ首相は人権や香港の民主化問題などを提起したというが、大きな話題にはならなかった。

 人民日報電子版は中英関係を「黄金時代」と評価し、「新時代の中国と欧州は共通の言葉を増やし、重要性は日増しに高まっている」と論評を伝えた。

 欧州の指導力に陰りが見える中で、中国にすり寄ることは、人権や民主化問題への圧力を弱め、強権姿勢を助長させることにつながらないか。

 毛沢東はかつて、アジアや欧州などに革命思想を輸出し、文革支持運動を拡大させた。いま、習近平氏は「中華民族の偉大な復興」のもとに、強大化した経済力と軍事力で、世界秩序の頂点に立つことを狙っている。その思想によって国民が過激化すれば、新たな危機や混乱が生まれる。習近平路線の危うさを認識すべきだ。(論説委員)