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急増する金密輸、消費税分がまるまる利益に 制度悪用の“錬金術”、暴力団のシノギにも? 

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急増する金密輸、消費税分がまるまる利益に 制度悪用の“錬金術”、暴力団のシノギにも? 

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 急激に増えている金の密輸。背景にあるのは、金を密輸して国内で転売すれば、消費税分がもうかるという日本特有の事情だ。そこに消費増税や世界的な金の高騰といった要素も積み重なり、密輸のうまみは増しているという。暴力団の資金源になっているとの指摘もあり、税関関係者は「根深い問題」と頭を抱える。

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■8%のもうけ

 税関などによると、金の価格は全世界一律で、非課税。ところが日本では国内での売買の際に消費税が課されている。消費税は「購入する側が負担する税金」という性質があるため、日本で金を貴金属店に売った場合、店は消費税8%分を上乗せした額で買い取ることになる。この「8%」が密輸の利益となる。

 一方で正規に日本に20万円以上の金を持ち込む場合は、申告して消費税を支払わなければならない。このため、隠し入れて消費税の支払いを免れ、国内で売却することで消費税分をもうけようとするのだという。

 関係者はこうした消費税固有の事情があるうえ、昨年4月に税額が5%から8%に引き上げられたことから、爆発的増加につながったとみる。また、昨年の金の価格平均は1グラム4340円と、10年間で約3倍に急騰していることも背景にあるという。

 税関関係者は「格安航空会社の増便で輸送費も抑えられるようになったことも一因」と解説する。

■新たなシノギ

 金の密輸は当然違法で、関税法の無許可輸入と消費税法の脱税にあたる。

 ただ、「刑事事件化されるのは氷山の一角」(税関関係者)という。昨年の平均密輸量は約4キロ(1736万円相当)。脱税額としては巨額ではないため、もし密輸が発覚しても罰金などの行政処分で終わることがほとんどで、罰金相当額を支払えば、金そのものは没収されずに手元に残る。

 国内に持ち込むだけで確実に現金化できるため、いまや暴力団関係者のシノギ(資金源)のひとつとなっているという。昨年12月、福岡県警に関税法違反容疑で逮捕された男2人は、それぞれ暴力団幹部だった。金4キロを香港から持ち込み、「税金を逃れるためにやった」と話した。

 「約2年前から新たなシノギとなっているようだ」と、暴力団に詳しい作家の溝口敦さんは説明する。

 溝口さんによると、組員自ら実行するより、知人に頼んだり闇バイトとして募ったりすることが多いという。溝口さんは「密輸は隠蔽して運べる量にも限度があり、安定的な収入になりにくい。ここまでして資金を捻出しなければならないほど、暴力団が経済的に厳しい状況にあるともいえる」と指摘している。(加藤園子)