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佐賀関・永倉和久さん、関アジ、関サバ狙い漁へ 漁協が支援、1年で独立

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佐賀関・永倉和久さん、関アジ、関サバ狙い漁へ 漁協が支援、1年で独立

伝統漁法の「一本釣り」で関アジを釣り上げた永倉和久さん 伝統漁法の「一本釣り」で関アジを釣り上げた永倉和久さん

 荒波にもまれる小型漁船「疾風丸」のかじを右手で取り、左手で海中に垂らした釣り糸のあたりを探る。大分と愛媛の間の豊予海峡。脱サラしてIターンした大分市佐賀関の漁師、永倉和久さん(31)が、伝統の「一本釣り」で、特産の関アジ、関サバを狙っていた。後継者不足に悩む漁協などの支援制度を利用し、大分県外から新規就業した未経験者11人の1人だ。

 「上司に命令されず、自分の人生を生きている実感がある」。真っ黒に日焼けした神戸市出身の永倉さんは、収入は安定しないとしながらも、力強い笑顔を見せた。

 子供のころから釣り好きで、兵庫県の釣り具メーカーに就職した。職場の人間関係で悩み「釣り具を売るより釣りたい」と漁業就業フェアに参加。大分県漁協佐賀関支店が平成21年に始めた、ベテラン漁師が1年間つきっきりで指導する支援制度に出合った。

 大分県や漁協によると、25年の県内の漁師は約4千人と、昭和63年比で6割減少。佐賀関支店では毎年約40人が引退する。

 同支店の漁師が一本釣りした魚のみに呼称が許される関アジ、関サバの水揚げ量も減り続けている。昨年度、関アジはピーク時の平成19年度比で3割以上、関サバは同4年度比で8割減少した。

 危機感を強めた佐賀関支店の指導制度に加え、県などは最大約440万円の補助や市営住宅の確保、定期的な面談で支援する。

 永倉さんは、競争率が平均30倍前後という同支店の面接を通過後、26年9月に移住した。1年後、指導を受けた親方の知人から疾風丸を譲り受け独立。当初は高価な釣り糸をスクリューに絡ませるなど失敗続きだったという。

 それから約3年。佐賀関漁港から漁船で約1時間の豊予海峡の漁場に、たくましい永倉さんの姿があった。自家製の疑似餌が付いた釣り針18本を水深約100メートルの海底近くに沈め、左手の人さし指にぐんと強い引きを感じると、次々に関アジと関サバを釣り上げた。

 先輩漁師の紹介で大分市の女性と結婚。さらにのめり込み、時には日の出前から夜まで漁に出る。収入は数万円の月もあったが、今では月60万円稼ぐこともあるという。

 これまで同支店が採用した11人は全員が定着した。支店総務課の高瀬大輔主任(31)は「覚悟をして来てくれた方の人生を預かり、夢を応援したい」とし、採用ではやる気を重視すると明かす。

 永倉さんは船上で「趣味を仕事にしない方が良いと言う人もいるけれど、好きなことをした方がやっぱりおもろい」と言い切った。