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【数字から見えるちば】「空き公共施設」の民間活用(下) 廃校-目立つ「空間運営」企業

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【数字から見えるちば】
「空き公共施設」の民間活用(下) 廃校-目立つ「空間運営」企業

 □ちばぎん総研主任研究員・五木田広輝

 千葉県内の廃校などの空き公共施設への企業進出が着実に進んでいる。平成29年度までの2年間で、県や市町村による熱心な誘致活動の成果もあって、12社が県内の空き公共施設への進出を決めた。

 施設の利活用は、自治体・企業の双方にメリットがある。自治体にとっては、(1)シンボル的施設の保持(2)施設の維持管理などの負担軽減(3)産業と雇用増加による経済活性化・税収増(4)雇用の場の確保による移住・定住促進-などが期待される。一方、企業にとっては、(1)設備投資などの負担軽減(2)地域貢献と企業のイメージアップ(3)自治体との連携強化(4)補助金など支援享受の可能性(5)豊かな自然環境に恵まれたオフィスでの勤務による多様な働き方の提供(働き方改革)-などが考えられる。

 実際の企業進出理由はさまざまである。千葉県の「自然環境」や「都心へのアクセスの良さ」などに価値を見いだす企業もあれば、「廃校を使って地域活性化に貢献したい」という理由で活用を決めた企業もみられる。

 活用企業の業種・業態に目を向けると、シェアオフィスやコワーキングスペースのように、施設を小分けにして貸し出すといった「空間運営」企業の利用が目立つ。いすみ市のプール主体のレクリエーション施設・旧サンライズガーデンを使った「hinode」(株式会社Ponnuf)や、勝浦市の旧清海小学校を改装した「清海学園キャンパス」(株式会社パクチー)などはその典型である。

 また、研修・合宿施設としてのリノベーションも多い。その先駆けとなったのは、19年に鋸南町の空き公共施設をフットサルやスカッシュのできる合宿施設「サンセットブリーズ保田」に生まれ変わらせた株式会社R.projectだ。同社は、他にも本格的なダンス合宿施設「白浜フローラルホール(旧南房総市の文化ホール)」なども運営している。こうしたスポーツ系合宿の受け入れの流れを受けて、このところ、野球合宿を中心とした「銚子スポーツタウン(旧銚子西高校)」(株式会社銚子スポーツタウン)や、企業合宿・研修に向けた「ちょうなん西小(旧長南町立西小学校)」(株式会社マイナビ)など、研修・合宿施設として廃校を蘇らせる例が県内で相次いでいる。

 空き公共施設を企業が活用するには、情報発信力(空き情報の周知)のほか、行政や地域住民の利活用に向けた合意、施設の耐久性や修繕費の負担(行政か進出企業か)、企業による費用対効果の検討など、さまざまな課題がある。空き公共施設の利活用が進展している自治体の特徴をみると、首長が強いリーダーシップを発揮したり、産官学連携や地域内外を巻き込んだ検討組織を設立するなどして行政や地域の問題の早期解決を図ってきたケースが多い。

 だが、今後空き公共施設の利活用を考える自治体が第一に行うべきことは、施設の利活用に向けたビジョンを固めることだ。「シンボルマークの保持」「維持管理費の負担軽減」「企業誘致と地域の活性化(地方創生)」など、利活用の目的を何にするかによって、財政負担の範囲も自ずと決まってくるはずだ。(寄稿、随時掲載)