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仙台・深沼海水浴場で写真展 砂浜によみがえる思い出

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仙台・深沼海水浴場で写真展 砂浜によみがえる思い出

 波の音が心地よく響く夏の海。東日本大震災で多くの人が犠牲になった仙台市若林区の深沼海水浴場は今年、遊泳が一部解禁され、徐々に震災前の姿に戻りつつある。そんななか、震災前の海辺の風景を見てもらおうと、写真展が開かれた。会場は砂浜、写真は砂の上。夏まっさかりの晴天の日、訪れた人々の思いを聞いた。

 ■何気ない営みが

 写真展は住民グループ「海辺の図書館」が企画し、8月11~18日にかけて行われた。写真は地元の写真家、佐藤豊さんが撮影したもの。深沼海水浴場を撮り続けており、深沼での何気ない人々の営みや風景を切り取ったものが砂浜にちりばめられた。

 小学校時代の仲間と訪れた同区の大学生、中村渉さん(21)は、幼いころ家族と来たことを覚えている。

 「初めて見た本物の海だった。大きな波にびっくりして親にしがみついた」

 写真に写し出された風景は、どこか懐かしさを感じたという。

 今年、遊泳が解禁されたときにも訪れて、久しぶりに荒浜の感触を確かめた。「思い出がよみがえった。こうして友達と来られてまたうれしい」とビーチバレーに興じていた。

 「こうして見ると人が亡くなったところとは思えないけど、被災地だということは忘れちゃいけないんだろうな」

 家族連れで訪れた福島市の菅野洋佑さん(35)は、同区に住む叔父がかつて海水浴場で交通整理にあたっていた。一緒に泳いだこともあったという。「夕焼けがとてもきれいだった。こんな風に撮れるなら自分も撮っておきたかった」と、夕暮れの写真を指さした。

 叔父は避難して命は助かったが、亡くなった知り合いもいたという。

 「完全に昔の姿に戻ったわけではないと思うけど、夏ごとに少しずつ復活していけばいいと思う。海の家なんかもあったらいいな」

 ■景色変わっても

 複雑な思いで写真を見つめる人もいた。

 「こういう流木でチャンバラごっこをしたこともあったな」

 仙台市青葉区の50代女性。小学校からの幼なじみを震災で失った。倒壊した家屋で見つかったという。

 「高校を卒業してから、幼なじみと2人でよくここに来ていた。仕事の話とか、好きな人の話とか。なんでも話して笑い合った」

 震災後は足が向かなかったが、震災遺構として整備された旧荒浜小学校や周辺地区周辺の整備が進んだことで、10年ぶりに同地区を訪れたという。

 震災前は整然と並ぶ住宅街、見事な松林、自転車道を走る若者たちの姿もあった。ピーク時のシーズンには約4万7千人が訪れた海水浴場。景色は変わっても、地域にいた人々の志は失われていないと話す。

 「ここの暮らしや文化を残して伝えていこうという気持ちを感じる。写真というのはいい手段。またこうして写真に囲まれて、思い出に浸りたい」。まぶしそうに海を見つめた。(千葉元)