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【しずおか“お酒”巡り】(3)“幻のウイスキー”熟成中

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【しずおか“お酒”巡り】
(3)“幻のウイスキー”熟成中

 □ガイアフローディスティリング「シングルモルトSHIZUOKA」

 静岡市街から山間部に向けて北へ車を走らせること約40分、目新しいウイスキーの蒸留所が姿を現す。「ガイアフローディスティリング」が運営する静岡蒸留所では平成32年夏頃の販売に向けてクラフトウイスキー「シングルモルトSHIZUOKA」の仕込みを行っている。

 ◆欧州の蒸留所に感銘

 同社は中村大航社長が立ち上げたウイスキー好きが注目する蒸留所だ。それまで静岡市清水区で精密機械の製造会社を営んでいた中村社長だったが「今は製造業(で経営するの)が難しい時代。お客さんと直につながる新しい事業を」と新会社の立ち上げを計画したのは平成24年のこと。その最中にプライベートでヨーロッパのウイスキー工場を巡り、スコットランドで新進気鋭のウイスキー「キルホーマン」の蒸留所を見学。牧場の一角にたたずむ蒸留所は馬小屋を改造したもの。「こんな小さな場所で有名なウイスキーが作れるのか」と感銘を受けた中村社長は「このくらいの小規模であれば自分でもできるのでは」とウイスキー造りを基盤に新会社の運営を始めた。

 ◆空気や水、木材にこだわり

 中村社長が挙げる「良い水が豊富、空気がきれい」という蒸留所の条件をクリアし、建設されたのが静岡市葵区落合にある静岡蒸留所だ。敷地面積は2万平方メートル、敷地内には、たるの保管庫や製造所などがある。

 空気がきれいであることはもちろんのこと、蒸留所の敷地内の井戸からくんだ水は南アルプスの伏流水で、ウイスキーに最適という。

 蒸留所の周辺は林業が盛んで、周辺で植生している杉の木を建築材や発酵タンクに活用。発酵タンクを製造する際は中村社長が自ら山に入り、製材所にも行き、工程を見届けた。木材などにこだわったため、実際に蒸留所を稼働させたのは28年11月になる。

 現在、蒸留所ではタイプが違う2基の蒸留機が稼働中。薪で直接加熱する蒸留機と一般的な蒸気による間接加熱する蒸留機、この2基の蒸留機を使い分けることで異なる個性を持ったウイスキーの原酒を作ることができるという。中村社長は「間伐材の薪を使用した直火蒸留機はヘビーでスモーキー。どっしりとしたコクのあるパワフルな味わい。一般的な蒸留機はライトでフルーティーな味わいになる」と違いを説明する。

 ◆味わい「県民らしく素直」

 ウイスキーは熟成するまでに3年ほど掛かるといわれており、「シングルモルトSHIZUOKA」のウイスキーボトルとしての販売は32年の夏頃からを予定している。

 現在は、熟成途中の原酒を味わい、好みのタイミングで瓶詰めをしたい顧客のために、たるごと販売する「プライベートカスク」として販売している。昨年150たるを販売した際は1日で完売してしまい、好事家の間で「幻のウイスキー」と噂されてしまう程だったが、今年は逆に「買えないと思って(今年の販売について)調べていなかったという人が多く、販売当初は売り上げが伸びなかった」と中村社長はぼやく。「シングルモルトSHIZUOKA」はまだ熟成途中ではあるが、中村社長はその味わいを「癖がなく静岡県民らしい素直な気質」と独特のたとえで表現する。

 ウイスキーの原材料は水、大麦、酵母の3つ。国産の大麦は値段が高いため、現在は輸入した大麦を使用している。ただ、地元で栽培された大麦を使用したウイスキーの開発を進めようと、2年ほど前から地元農家と契約し、県内ではほとんど作られていない大麦の生産を始めた。

 11月からは一般客向けに蒸留所の見学をスタートさせるなど、今後も話題に事欠かない蒸留所となりそうだ。 (吉沢智美)

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 ■シングルモルトSHIZUOKA ウイスキーボトルとしての販売は平成32年からだが、現在はプライベートカスクとしてたるごと販売している。価格は約30万円~。30年版では直火で加熱する蒸留機を使用した原酒と蒸気による間接加熱の蒸留機を使用した原酒をブレンドしたものをたるに詰めている。予約は31日まで。9月以降は31年版の予約となり、こちらは直火加熱の蒸留機を使用した原酒と蒸気による間接加熱の蒸留機を使用した原酒をブレンドせず、そのままをたるに詰めている。

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 ■ガイアフローディスティリング

【代表者】中村大航氏

【住所】静岡市葵区落合555

【従業員数】10人

【問い合わせ先】(電)054・292・2555