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「はれのひ」逮捕あす2カ月 被害者の苦しみ消えず 神奈川

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「はれのひ」逮捕あす2カ月 被害者の苦しみ消えず 神奈川

 ■ようやく反省…法廷で何を語る

 売上高を粉飾した決算書類などを用いて銀行から融資を受けたとして、振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」(横浜市)=破産=の元社長、篠崎洋一郎被告(56)が詐欺容疑で最初に逮捕されてから、23日で2カ月が経過する。成人式を前に突然営業を取りやめ、多くの女性が二度とない日を晴れ着で迎えられなかった前代未聞の騒動。原因を作った男は、事の深刻さをどれだけ認識していたのだろうか。すでに来年、再来年の予約を済ませてしまった人々は今なお、無責任な経営者に苦しめられている。 (宇都木渉)

 改めて篠崎被告のこれまでの行状を振り返る。1月8日の成人式を前に営業を放棄し、多くの新成人を落胆させたが、すぐさま謝罪をするでもなく、ようやく記者会見を開いたのが同月26日。「隠れるつもりはなかった」などと言い訳に終始する姿は、見る者をあきれさせた。

 ◆“海外逃亡”の末

 さらには債務整理や被害者への着物の返還作業を手伝うことなく、3月ごろには海外に渡航。債権者集会にも姿を見せずに、ビザの期限が切れる6月まで「逃亡」をはかっていた。

 会見では「債務返済に充てられるような個人的資産はない」とも話し、捜査関係者によると、国内で保有する銀行口座からまとまった預金残高などは確認されなかった。だが、長期の海外渡航をしており、一部の所持金を海外の口座に移して、逮捕直前までの「逃走資金」に充てていた可能性まで指摘されている。

 篠崎被告は平成28年9月に売上高を粉飾した決算書類などを用いて2つの銀行から融資を引き出したとして、これまでに2度逮捕されているが、会社が大きく傾いているこの当時ですら「確定申告上の金額から推定すると、年間数千万円の収入を得ていたとみられる」(捜査関係者)という。最初の逮捕時、捜査本部が置かれる伊勢佐木署に移送された篠崎被告は、報道陣のカメラに向かって「逆ギレ」したかのような仏頂面まで見せていた。

 ◆1円も戻らず

 被害者の一人で、横浜市西区に住む大学3年の女子学生(20)はアルバイトを掛け持ちしながら、振り袖代など約28万円を支払っていた。前述の会見が開かれた際は、産経新聞の取材に「遅いと思うが、出てきてくれてよかったとも思う。誠意のある対応をしてほしい」と話していたが、その思いは徹底的に裏切られた形だ。支払ったお金は1円も戻ってきていない。

 今回、再び篠崎被告について水を向けると「(これまでの行動から)反省はしていないのだろうなと思っていた」としながらも、「全然、お金がないという話だったので、奥さんや子供と海外にいると聞いたときは『まさか』という思いだった」と振り返る。

 和装業界誌「ステータスマーケティング」の編集長で、問題が発生した1月8日当日に「はれのひ株式会社被害者の会」を立ち上げた「きものと宝飾社」の松尾俊亮氏は「これまでに200人以上の被害者から相談があった。篠崎元社長が逮捕されて以降も、来年の成人式のために着物を購入していた女性から『返却はされたけれど、仕立てられていない状態なのでどうしたらいいでしょうか』という問い合わせも1件きている」と明かす。

 ◆モノがあるだけマシ

 もっとも、「モノがあるだけマシ」という見方もある。来年以降、レンタルサービスを利用するつもりだった被害者は、まるまるお金だけを取られたうえに、改めて一から振り袖の準備を迫られることになった。銀行に対する詐欺という“別件”で篠崎被告の刑事責任が問われている現在も、一件落着にはほど遠いのが実情だ。

 捜査関係者によると、篠崎被告は2回目の逮捕以降、やっと被害者に対して「申し訳なかった」と反省を口にするようになったという。前述の女子学生は「せめて今は、自分のしたことと向きあってほしい」と、諦めたように話した。

 「100店舗出店を目指す」「将来は上場したい」などと周囲にぶち上げていたという“ビッグマウス”は、来る法廷の場で何を語るのだろうか。

 成人式と振り袖 成人式は昭和21年に埼玉県の蕨町(現・蕨市)の青年団長が、未来を担う青年を励ますために企画した「青年祭」がルーツとされ、影響を受けた政府が23年に「成人の日」を制定した。着付け教室の日本和装によると、諸説あるものの、現在に通じる振り袖は江戸時代には存在したという。袖を振る行為には厄払いや、未婚の女性の愛情表現などの意味合いがあったとの見方もある。