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世界への挑戦「もう一度」 京都の女子プロボクサー・小澤瑶生さん(33)

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世界への挑戦「もう一度」 京都の女子プロボクサー・小澤瑶生さん(33)

 ■厳しい環境も、まだ成長

 寝るのは明け方、タイトル戦を組むのも一苦労-。たやすい状況ではないが、京都市内で練習に励む女子プロボクサー、小澤瑶生(たまお)さん(33)が世界王者を目指している。3月にドイツで行われた世界戦では惜しくも一歩届かなかったが、「まだまだ成長している。もう一度挑戦したい」との気持ちが原動力だ。

 京都御所に近い雑居ビルの地下にあるジム「フュチュール」(同市中京区)。リングの周りは熱気で満ちあふれ、小澤さんは別の女子選手とマスボクシングに励んでいた。細かくステップを刻み、寸止めのパンチを放つ実戦練習だ。

 ボクシングとの出会いは平成22年3月、24歳の時だった。長野県出身で大学を卒業し海外で1年過ごした後、京都の大学に通っていた弟の紀文さん=同年に22歳で死去=を心配した両親に頼まれ、一緒に暮らすように。偶然ジムの近くを通り掛かり、すぐに入会。ちょっとしたこつで重いパンチが打てるようになり、のめり込んでいった。

 「もっとやりたい」との思いが芽生え、世界を目指すことに。27年4月には女子東洋太平洋スーパーフライ級王者になり、世界タイトル戦に2度挑んだが、いずれも判定負けを喫した。

 女子プロボクサーを取り巻く状況は厳しい。日本ボクシングコミッション(JBC)によると、29年のプロは141人で、男子の1割未満。知名度が低く、試合が放映されるのは高額なファイトマネーが懸かる男子だけだ。

 ボクシングのみで生計を立てられる女子選手は一握りだ。小澤さんは昼前に起床し、夕方からジムで練習。午後10時すぎから、バンドが生演奏し、食事を提供する祇園の会員制サパークラブ「ラポー」で閉店の午前3時まで働き、明け方に就寝する生活を送る。

 競技人口の少なさから、タイトル戦を組むことも難しい。会員制交流サイト(SNS)を通じて突然声が掛かることもあり、交渉条件に加え「タイミングや運で左右される世界」という。

 試合を主催した場合は会場の経費や相手への報酬だけでなく、審判らの手配も必要になる。ジム会長の平山靖さん(58)は「これまで世界戦を10回以上やったけど、トータルでは赤字」と苦笑いする。

 小澤さんは、勤務先で知り合った人を通じて複数の企業から支援を受ける。次の世界戦は未定だが「弟が私とボクシングを結び付けてくれた。応援してくれる人に少しでも返せるようにしたい」と意気込んでいる。