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諫早水門訴訟「開門」確定無効の公算大 福岡高裁、30日に注目判決

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諫早水門訴訟「開門」確定無効の公算大 福岡高裁、30日に注目判決

諫早湾の潮受け堤防。司法判断に揺れ続けている=長崎県諫早市 諫早湾の潮受け堤防。司法判断に揺れ続けている=長崎県諫早市

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の堤防排水門を開門するのかしないのか-。開門を迫る一部の漁業者と、拒む営農者側との深刻な対立を生み、国も交えた三つどもえの法廷闘争に、終止符が打たれる可能性が出てきた。福岡高裁が国の立場を支持し、一度は確定した「開門命令」判決の効力を失わせる司法判断を下す公算が大きくなっているためだ。有明海再生の行方を左右する注目の判決は、30日に言い渡される。

 ◆和解決裂

 福岡高裁は今年3月、国と漁業者側が争う訴訟の和解協議で「開門はせず、国の基金によって問題解決を図る」とする和解勧告案を示した。

 国側の示した漁業振興基金は100億円で、西井和徒裁判長は和解案こそが「(諫早干拓をめぐり)混迷している状況を打開する、唯一の現実的な方策だ」とし、国が基金を実際に創設するかはあくまで「和解成立が条件だ」だとした。

 開門派である一部の漁業者側は納得しない。

 漁業者側に立つ馬奈木昭雄弁護団長は「(平成22年に)開門の確定判決を書いた高裁自らが、その判決を投げ捨てるのか」と声を荒らげ、勧告案の受け入れを拒否した。5月28日、協議は決裂した。

 ◆混迷続く

 今回の訴訟で、国は、一度は確定した福岡高裁の開門命令判決に基づく開門を強制しないよう、開門派漁業者側に求めてきた。

 国は、確定判決を受け入れないことへの制裁金が科され、これまでに約12億円を支払ってきた。その間も、諫早干拓問題は混迷を続けた。

 確定判決と相反する「開門禁止」の仮処分命令が出て、司法判断は割れた。

 国は司法の板挟みになった。それでも、国は、営農者にも漁業者側にも受け入れられるような現実的な解決策を探り続けた。

 昨年4月、営農者側の訴えを認め、開門を差し止めた長崎地裁判決に、国は控訴を見送った。基金での和解以外には、有明海の漁業再生への道はないとの考えを鮮明にした。

 その後、舞台は福岡高裁に移った。漁業者側には国の基金案を受け入れるムードが出てきた。

 有明海沿岸4県の漁業団体で唯一、一部の開門派漁業者側に立ってきた佐賀県有明海漁協も折れた。

 4県全てが国の基金案について容認した結果、漁業者側弁護団は孤立無援に追い込まれた。

 ◆事情変更

 いったん確定した「開門判決」への異議が認められるには、その後に生じた「事情変更」が要件となる。

 国は、原告側の漁業者の共同漁業権が平成25年に消滅し、開門を請求する権利がなくなったと主張した。「漁獲量も回復しており、現状では開門を強制できない」としてきた。

 福岡高裁側は国の示した基金案を評価しており、漁業者側には不利な判決になる可能性があると示唆している。

 漁業者側弁護団はこれまで「開門すべきだ」とする確定判決をよりどころとしてきた。「漁業権は有効で、存続している」と国に対し反論している。30日に一定の結論が出てもなお、徹底抗戦の構えを見せる。