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【ZOOM東北】宮城発 県対がん協会60周年 受診840万人超、多くの命救う

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【ZOOM東北】
宮城発 県対がん協会60周年 受診840万人超、多くの命救う

 がんの発生予防と早期発見・早期治療のため精度の高い検診の普及に取り組む「宮城県対がん協会」(久道茂会長)が今年、創立60周年を迎える。検診車が地域を巡回する「胃がんの集団検診」を全国に先駆けて開始するなど、がん対策をリード。胃がん検診の受診者は延べ840万人を超え、多くの命を救ってきた。創始者の精神を継承し、「がん征圧」への決意を新たにしている。 (石崎慶一)

 ◆「征圧」を目指す

 宮城県内では地域住民を対象にした胃がん検診は、県対がん協会が市町村から委託を受けて実施。富谷市の会場では住民らが検診車で胃のX線(レントゲン)検査を受けていた。検診を終えた男性(68)は「60歳で会社を定年退職した後は毎年受けている。健康管理になる」と話した。

 県対がん協会は「がん征圧」を目指し、当時、東北大学長だった黒川利雄氏が主導して昭和33年9月に創立された。黒川氏は明治30年に北海道三笠山村(現・三笠市)に生まれ、東北帝国大(現・東北大)に入学。昭和35年にX線撮影装置を搭載した検診車を完成させ、県内で日本初の胃がんの集団検診が始まった。

 「その頃も胃がんの診断はX線検査で行っていたが、症状が出てから病院を受診して、触診でしこりが触(さわ)れるくらいの進行した胃がんの患者がほとんどだった。そこで症状が出る前に早期の胃がんを発見しようと集団検診が行われるようになった」と県対がん協会がん検診センターの渋谷大助所長は説明する。

 検診車での検診が始まった翌年の36年に受診し、早期の胃がんが見つかった栗原市の石川司之(もりゆき)さん(85)は「当時、がんは死に直結していたので、目の前が真っ暗になった」と振り返る。

 43年に結成された、がんを克服した人たちによる「みやぎよろこびの会」の会員となり、手術で助かった自らの経験を踏まえ、がんの早期発見・早期治療の大切さを訴えてきた。会員の高齢化などから同会は6月に解散したが、会長を務めた石川さんは「今後も地域住民にがん検診受診を勧めていく」と力を込める。

 県の「県民健康・栄養調査」によると、職場や人間ドックなどを含む県内の胃がん検診の受診率は平成22年の55・6%から28年は61・4%に上昇。「県対がん協会や市町村の地道な取り組みがあり、宮城は受診率が高い」と県健康推進課。これを踏まえ県は大腸がんなどを含めたがん検診の受診率の目標を、国の目標「50%」よりも高い「70%以上」に設定している。

 ◆未検者への勧奨に力

 県対がん協会による胃がん検診の受診者は、28年度に延べ約842万4千人に上った。がんが発見された約1万5600人のうち、早期がんは約1万人と約6割となっている。精密検査の未検者への受診勧奨にも力を入れ、28年度までの精密検査の受診率は約9割と高い水準を維持している。ただ近年は受診者数と受診率の伸び悩みが課題で、受診者の固定化や人間ドックなどでの内視鏡検診の増加などが原因と考えられるという。

 胃がん検診では、31年度から仙台市で内視鏡検診を導入し、X線検診との選択方式とする予定。内視鏡受診者数は増え、X線受診者数は減るが、全体ではプラスになるとされ、「仙台市でも胃がん検診の全体の受診者数は増加することが期待される」と渋谷所長。

 仙台市青葉区の県対がん協会の移転跡地に整備された受診者用駐車場には、黒川氏の功績を顕彰する「がん集団検診発祥の地」の碑が建つ。

 渋谷所長は「『発祥の地』の名に恥じないよう、黒川先生の『がん征圧』への思いを引き継ぎ、科学的根拠に基づいた精度の高いがん検診を続けていきたい」と語る。