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【ちば人物記】匝瑳で手書きの地域新聞発行・藤井結花さん(27) 人の内面に迫り、後押し

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【ちば人物記】
匝瑳で手書きの地域新聞発行・藤井結花さん(27) 人の内面に迫り、後押し

 匝瑳(そうさ)市で活躍する人々や街の魅力などを紹介する無料配布の新聞「そうさちいきしんぶん」を昨年9月に創刊した。取材から執筆、レイアウトまで編集作業を一人でこなす。市内で書道教室を開く師範でもあり、新聞も筆とペンによる「手書き」にこだわっている。

 5歳から習字を始め、大東文化大の書道学科を卒業。県内の公立高校で非常勤講師として書道を教えた。

 「生徒たちが『どうせオレなんか』とよく口にしていた。まだ若いのに、なんでそんなことを言うのか。あまり褒められたことがないから、自信が持てないのではないかと気づいた」

 子供たちを大人になるまで褒めて育てることができる場所-。いつか開きたいと思っていた書道教室が、それだった。「いま、やらなければ」と一念発起。市内の空き家を改装して、昨年4月に「さくら書道教室」を開設した。

 順風満帆とはいかなかった。生徒が全く集まらない。手書きの看板やメニュー作りを請け負う仕事でしのぎながら、高校での講師も続けていくうちに無理がたたり、3カ月後には過労と心労で倒れた。

 本当にやりたいことは何か。改めて自分と向き合い、考えた。「同じようにPR方法に悩んでいる人もいるはずだ」。市内で活躍するあまり知られていない人や魅力的な店にスポットを当て、地域情報を発信することを思いついた。子供からお年寄りまで読める新聞を作ることにした。

 生後間もなく母を亡くした。自営業の父は多忙で、子供の頃は寂しい思いをした。そんな時は祖父母や近所の人、親戚らが面倒を見てくれたり、遊びに連れて行ってくれたりした。「地域の皆さんに見守られながら成長できた。このまちに恩返しをしたい」。常々思っていた感謝の気持ちも背中を押した。

 書道教室の合間をみて年3、4回のペースで発行。創刊号は500部を印刷し、一人で地道にポスティングをした。またたく間に話題を呼び、昨年12月の第2号は一気に7千部まで増刷。新聞折り込みでの配布も始めた。

 特技を生かして手書きにこだわった紙面は、読者から「手書きってすごい」「つい最後まで読んでしまった」「私も字が上手になりたい」と反響が大きく、書道教室の生徒も急増した。

 「その人が何をやってきたのかというよりも、『どうしてそうしたのか』という内面が見えるような記事にしたい」

 取材では、一歩踏み込んで話を聞くように心がけている。印象深い出会いは、今年4月発行の第3号で取り上げた駒師の江鳩孝敏さんだった。約20年前に47歳で会社をリストラされた後、趣味だった将棋の駒作りを仕事にした。「一度の人生。自分の好きなことを仕事にして生きていく。そんな人が増えてほしい」。江鳩さんの熱い思いを感じ取り、読者にも伝えたいと思った。それは、自身が書道教室を開いた動機にもつながっていた。

 現在は8月12日に発行予定の第4号を制作中。「夏休み特集」として、小さな子供でも読んで楽しめる記事を考えている。

 「これから先のことは分からないし、あえて決めていない。そのワクワク感を楽しみながら、いろんな人と関わって地域を盛り上げていきたい」 (城之内和義)

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【プロフィル】ふじい・ゆか

 平成3年、匝瑳市生まれ。5歳から書道を習い始め、大東文化大書道学科を卒業。書道師範。平成29年4月、市内に「さくら書道教室」を開設。同9月、「そうさちいきしんぶん」を創刊。趣味は御朱印集め、文字を書くこと。