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カーフェリー、「クルーズ人気」取り込む  阪九フェリー就航半世紀

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カーフェリー、「クルーズ人気」取り込む  阪九フェリー就航半世紀

 阪九フェリー(北九州市門司区)が運航する関西-北九州間のカーフェリーが8月、就航50年を迎える。国内長距離フェリーのパイオニアとして、大量輸送を担ってきた。団体客減少やトラック離れなど苦境もあったが、最近は新船の就航でクルーズ旅行のニーズを取り込む。トラック運転手の長時間労働を是正する「働き方改革」も追い風となっている。 (大森貴弘)

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 2人部屋で36・5平方メートルと、シティーホテル並みの広さを確保した最上級客室。露天風呂や展望デッキからは、瀬戸内海の夜景や満点の星空を楽しめる。

 阪九フェリーが平成27年、泉大津(大阪)-新門司航路に新たに投入した「いずみ」と「ひびき」だ。

 「大部屋で雑魚寝、というのは過去の話。今は個室がメインで、ちょっとしたクルーズ気分を楽しめます」。小笠原朗社長は、胸を張る。

 豪華客船ではないカーフェリーにとって、大部屋から個室への切り替えは冒険でもあった。1隻当たりの定員が減るからだ。

 それでも、船旅そのものを目的とした「クルーズ旅行」の人気を取り込もうという、同社の狙いは的中した。

 27年度の旅客数は前年度比2割も増え、40万人だった。

 同社は挑戦を続ける。もう一つの航路、神戸-新門司でも2隻を入れ替える。客室の静けさを高め、ペットと一緒に泊まれる部屋や、犬を遊ばせるドッグランも設ける。

 11月から順次、建造し、32年春の就航を目指す。

 今後の課題は、雑魚寝のイメージ払拭だ。特にシニア層に根強いという。新船に加え、旅行会社などを通じて、プチクルーズ色をアピールする。

 ◆まるで「奴隷船」

 阪九フェリーは昭和43年8月、国内初の長距離カーフェリーとして、神戸-北九州の運航を始めた。

 高度成長のまっただ中であり、旅行需要が急速に膨らんでいた。半面、関西~九州間では、山陽新幹線が建設中で、高速道路はまだなかった。団体客はフェリーに殺到した。

 居住性は二の次だった。船室は雑魚寝の2等が主流で、1人当たりの幅は50センチしかなかった。客は通路まであふれた。

 「1隻に1千人が乗り、今は冗談で『奴隷船』と形容するほどです」

 阪九フェリー常務関西支店長の河越順太郎氏は、こう振り返った。

 同社は船を増やし、当初の1日1便から、40年代後半には3便まで増やした。年間旅客数は48年度にピークを迎え、104万人に上った。

 昭和50年代、山陽新幹線や中国道、山陽道などが相次いで開通し、時間のかかる船旅は敬遠された。平成に入ると、旅客数はピークの半分以下に落ち込んだ。

 団体客に代わって、トラックが「お得意さま」となり、フェリー会社の経営を支えた。阪九フェリーでは、年間20万台前後を輸送した。

 ところが、平成21年度に高速道路の料金引き下げ(千円高速)が始まる。トラックがフェリーから高速道路に流れた。

 同社の21年度の運賃収入は前年度比3割減の73億円となった。翌22年度は8億円の赤字を計上した。船舶を6隻から4隻に減らすなどの合理化に取り組んだ。

 その後、深刻なトラック運転手不足が「追い風」となる。

 トラックドライバーの長時間運転の是正が強く求められるようになり、フェリーが見直された。乗船中にドライバーが休めるし、トラックだけ運ぶこともできる。

 トラック輸送台数は21年度の16万台から、29年度には21万台に回復した。同社は、今後も増加傾向が続くと見込む。

 社長の小笠原氏は「さまざまな要素に翻弄されたが、苦しい時期を乗り越え、ようやく先が見通せる状況になった。投資にも踏み出せる。50年の節目の年を、100年企業に向けた折り返し点にしたい」と語った。

 ◆「新船で飛躍を」

 こうした動きは、阪九フェリーだけではない。

 フェリーさんふらわあ(大分市)は5月、約100億円をかけた新船を就航した。個室を大幅に増やし、専用バルコニーの付いたスイートルームなどを設けた。レストランや浴場も拡張した。

 井垣篤司社長は「25年ぶりの新造船。阪神と九州を結ぶ航路で飛躍を遂げたい」と語った。

 名門大洋フェリー(大阪市)も、2隻を更新した。女性向けに、座れる化粧部屋を新設した。