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【書と歩んで 21世紀国際書展特別大賞の4人】(2)自由民主党総裁賞・小川香遊さん(74)

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【書と歩んで 21世紀国際書展特別大賞の4人】
(2)自由民主党総裁賞・小川香遊さん(74)

 ■書を通じ養われる人間性

 静まりかえった部屋で、深く息を吸い込み、心を研ぎ澄ませた。ふと自分自身に戻ったとき、心に浮かんだのは“神”という文字だった。静寂が生み出す張り詰めた空間で、無心になって、一気に筆を走らせた。

 形の流麗さはもちろん、墨の濃淡も美しさをつくりだす大切な要素。小川香遊さん(74)は「字はその人の人間性を表す」と説く。繊細ではかなげな字、優しさや温かさを感じる字など、心の機微を映し出した書作品は、見る人の心を打つという。

 書道との関わりは、13歳のときに学校内の書道クラブに通い出したことに始まる。高校時代には、産経国際書会最高顧問で國藝書道院会長を務める書家の齋藤香坡氏のもとで書道を教わった。

 「昔から手紙を書いたり、字を書いたりすることが好きだった」と、自然と筆を執るようになった。「師から書そのものはもちろん、人と接する姿勢や向き合い方も学んだ」という。

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 小川さんは高校3年生のとき、齋藤氏が教室をやめたと同時に、書道をやめた。就職や結婚、育児など忙しい日々を過ごすなか、32歳のときに齋藤氏から突然電話があった。「また書道を始めてみないか」。その言葉が、飛躍への足がかりとなった。

 約3年後、「僕の代わりに教室を引き継いでくれ」と、白羽の矢が立った。当時、教室には児童ら約15人の生徒が通っていた。人に書道を教える立場になることに、戸惑いや不安はあったが、「子供たちのためにも、なんとかしないといけない」と引き受けた。

 生徒の課題のお手本を納得いくまで何枚も書き続けるなど、無我夢中で取り組んだという。「人に教えることは、本当に大変なことだと感じた」と当時を振り返る。

 引き受けてから約1年後、教室をやめた3歳の男児がいた。保護者が教育投資の一環として教室に通わせていたが、正座などの行儀を指導していくなかで「書道が嫌いになった」からだ。

 小川さんは「早い時期から教えればいいとはかぎらない」と気が付いた。それ以来、教室に通う生徒の年齢の条件を幼稚園年長以上に指定した。

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 教室を引き受け、約40年が経過した。現在は、週2日、自宅に隣接した教室で、約50人の生徒を教えている。

 小川さんは書道について、「楽しいだけでは駄目だと思う。書道を学ぶなかで、人に迷惑をかけないといった規律や礼儀をしっかりと教えることも大切」と語る。また、教室に通う生徒の課題を添削するときは、必ず1カ所は褒めることを意識している。

 「一人一人性格も違えば、それぞれの個性がある。その人の良さを引き出して、褒めていくことで自信にもつながる」と語る。そして小川さんは「子供たちには、人としても伸びてほしいから」とほほ笑んだ。 (王美慧)