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【ちば人物記】「龍馬が惚れた男」を出版した印西在住の仲俊二郎さん 隠れたヒーローに光を

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【ちば人物記】
「龍馬が惚れた男」を出版した印西在住の仲俊二郎さん 隠れたヒーローに光を

 激動の幕末を舞台にした「龍馬が惚れた男」(栄光出版社)を執筆、出版した。主人公は福井藩士、由利公正(きみまさ)。坂本龍馬と劇的に出会い、意気投合する。龍馬は暗殺される直前、手紙で明治新政府の財政をこの男に託したという。

 由利は上京し、歴史の表舞台へと躍り出る。新政府の基本方針となる五箇条の御誓文起草に参画。太政官(だじょうかん)札(紙幣)発行、新政府軍の軍資金調達などに奔走し、明治新政府の財政の基礎を築いた。

 「明治維新で果たした由利の業績はすごい。だが、その名はあまり知られていない。隠れたヒーローに光を当てたかった」

 膨大な文献を読み込み、構想を練った。由利の出身地、福井を訪れ、ゆかりの地を巡った。時空を超えて由利の実像が生き生きと浮かび上がった。

 「歴史経済小説です。改革に対し、頑強に抵抗する守旧派勢力にどう対処するのか。現代の企業人も多くのヒントを得ることができるのではないか」

 作家一筋の人生ではなかった。大学卒業後、川崎重工業に入社した。将来の国際ビジネスに向け、英語を学んだ。通勤電車で英字紙を読む。夜は自宅で英語教本をぼろぼろになるまでめくった。

 1980年代、20世紀最大級のプロジェクトといわれたドーバー海峡海底トンネル計画が浮上した。

 --海底トンネル掘削機を受注せよ。重大な社命を帯びて現地に飛んだ。初夏。フランスの港に立った。ドーバー海峡を凝視した。「この仕事、絶対取らなあかん」。欧米や日本のライバル社が総力を挙げて取り組む受注合戦の最前線に突撃した。人脈を駆使。絶対にあきらめない交渉力を生かし、見事受注に成功した。

 その後も国際ビジネスマンとして思う存分働いた。達成感はある。50代になってじっくり考えた。

 「残りの人生は少ない。やり残したことがあるんやないか」

 昔の記憶がよみがえった。小説が好きで一時期、東京都内の小説講座に通ったことがある。講師の言葉を今も鮮明に覚えている。

 「作家になる条件は何か。継続。書き続けることだ」

 過酷なビジネスの世界で生き抜き、しばらく文学から遠ざかっていた。「ひとつ小説を書いてみよう」。自らの海底トンネル掘削機受注合戦の体験を生かし、一気に書き上げた。平成6年、「ドーバー海峡の朝霧」(ビジネス社)を出版。好評だった。

 昭和を駆け抜けた伝説の商社マン、海部八郎を主人公にした小説「我れ百倍働けど悔いなし」(栄光出版社)に取り組んだ。

 「何度か、彼と会ったことがある。気さくな人だった」と振り返る。商社の後輩や同級生らに会って実像を綿密に取材。文献を読み込んで執筆した。熾烈(しれつ)な国際ビジネスを舞台に社内抗争や男の嫉妬も生々しく描写した。

 70歳を超えたが、意気軒高。次回作の構想を練る。

 「明治、昭和の経済人の生き様を書きたい。日本は少子高齢化社会を迎えている。年配の人が日本を支えていかなあかん。どんどん社会に進出して活躍できる時代が到来したんです」 (塩塚保)

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【プロフィル】なか・しゅんじろう

 本名・仲元俊二。昭和16年、大阪市出身。印西市在住。大阪市立大経済学部卒業。川崎重工業入社。八木義徳や武者小路実篤らの作品を愛読。地元の謡曲同好会「印謡会」会員。プロ野球の阪神ファン。好きな言葉は「継続は力なり」