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川俣シャモに全国の料理人が注目 震災乗り越え県外で人気

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川俣シャモに全国の料理人が注目 震災乗り越え県外で人気

 福島県川俣町の特産「川俣シャモ」が、全国の料理人から注目されている。東京電力福島第1原発事故の風評被害で、一時は出荷数が3分の1まで激減したが、品質の高さやおいしさが改めて評価され、首都圏の高級店向け出荷も右肩上がり。5年後の8万羽出荷を目指し、ブランド力強化への取り組みも始まった。 (内田優作)

 ◆町の農家が協力

 川俣シャモは現在、同町の「川俣シャモファーム」が中心となり生産、平成29年度の出荷数は、前年度の1・2倍、約6万7千羽に達した。

 「1社だけでやったら、金もうけになる。だから町の農家が協力して、特産づくりをしている」と話すのはファームの代表、斎藤正博さん(67)だ。

 川俣シャモの生産は、(1)ファームが卵を孵(ふ)化(か)させる(2)ひなを13軒の農家に配分(3)各農家が成鳥に育てる-という方式を採用。飼育は餌やりなど1日1時間程度で、農家にとって、さほど負担にならないという。

 大きく育った川俣シャモの販売や市場への売り込みは「川俣町農業振興公社」の役目だ。同公社代表の笠間英夫さん(63)=写真=によると、出荷先の約4割は県外で、年間2万羽超を出す首都圏は、有望な市場だ。「プロの料理人の間でも『品質のよいシャモ』と高く評価してもらっている」(笠間代表)といい、ジャンルを問わず高級料理店が顧客に名を連ねる。

 今は順風の川俣シャモだが、平成23年の震災と東京電力福島第1原発事故による強烈な向かい風に見舞われた。同町山木屋地区が避難指示区域に指定されたため「シャモも放射能に汚染されている」と風評が立った。なじみの取引先からも注文見合わせが相次ぎ、出荷数は、あっという間に3分の1に激減した。

 ◆安全性アピール

 だが、県の放射能検査が始まり、安全性が確認されると、引き合いが戻り始めた。それまで放し飼いだった飼育法を見直し、鶏舎を拡充するなど安全性をアピール。3年間で出荷数を震災前の水準に戻すことができた。また、震災後途絶えていた首都圏の百貨店の扱いも始まった。早期のV字回復に、笠間さんらは安(あん)堵(ど)の表情を浮かべる。

 市場での評価の高まりに、今後も需要増が見込まれるが、笠間さんは「小口の取引先を開拓して、じわじわ出荷を増やしていく」と、急速な生産拡大には否定的だ。理由の一つは生育期間。ブロイラーの飼育期間は約50日だが、川俣シャモは110日。各農家の出荷は年3回が限度で、飼育・出荷のローテーションを厳密に調整しているため、飼育する農家を急に増やすことが難しいという。

 また、過去に量販店とも取引したが「単価が高いため、短期間で取引が終わり、出荷に苦労した」(笠間さん)ことも、慎重にさせる要因だ。このため、生産目標は、約5年後に8万羽と控えめにしている。

 公社などは、川俣シャモのブランド力強化に向け、生産地の特性が品質と結びつく生産品を認証する農水省の「地理的表示」取得を進めている。「育てる農家のモチベーションにもつながる」(笠間さん)と関係者は期待する。これまで県内で取得した例はなく、笠間さんは「年内に取得したい」(同)と意気込んでいる。

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【用語解説】川俣シャモ

 川俣町は古くから絹織物で栄え、機屋(はたや)の旦那衆が闘鶏を楽しんだ名残で、シャモの飼育が広まったといわれる。町の名産品にしようと、昭和58年から食用シャモの研究が始まり、米国産のニワトリなどと交配し、現在の川俣シャモを作り上げた。脂っぽくないが深いコクがあり、適度な弾力が特徴。飼育から販売まで、同町内で一元管理されている。