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河瀬直美監督「Vision」きょう公開 ロケ地の奈良・吉野、喜びに沸く

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河瀬直美監督「Vision」きょう公開 ロケ地の奈良・吉野、喜びに沸く

 奈良市出身の映画監督、河瀬直美さんの最新作「Vision」が8日から全国の映画館で公開される。オスカー女優のジュリエット・ビノシュさんと、河瀬作品への出演は3作目となる俳優、永瀬正敏さんがダブル主演。全編が吉野町を中心に県内で撮影されたとあって、制作に協力した地元住民からは喜びの声が上がっている。

 本作は、世界中を旅して紀行文を執筆するフランス人エッセイストと、吉野の森を守る「山守(やまもり)」が、言葉や文化の壁を越えて心を通わせていく物語。主演2人のほか、人気ダンス&ボーカルグループ「三代目J Soul Brothers」の岩田剛典さん、女優の夏木マリさんら豪華キャストが参加した。

 昨年5月にあった第70回カンヌ国際映画祭で、河瀬監督が本作のプロデューサー、マリアン・スロットさんと意気投合したことをきっかけに翌6月、制作が決定。同年9~12月、夏と冬それぞれのシーンを計約6週間にわたって撮影した。

 河瀬監督は「役を積む」という独特の言い回しで、俳優に「役を生きること」を求める。そのため、永瀬さんは肉体改造に励む一方で、山ごもりしてチェーンソーでの木の伐採やまき割りなどを学んだという。

 永瀬さんを直接指導した山守の中井章太さん(49)は「まさか山守が映画の題材になるとは驚いた。林業が衰退していく中、山の多様性を改めて感じられる映画なのでは」と話す。

 また、ビノシュさんは撮影期間中、自ら望んで吉野町にある普門山・清谷(せいこく)寺の宿坊で生活。滞在していた43日間、かつて河瀬作品でケータリングを担当したギャラリー経営、安達泉さん(63)=奈良市=が3食すべてを振る舞った。

 「大女優の口に私の料理が合うのかどうか…」。安達さんには一抹の不安があったというが、「明るく気さくで、気取ったところのない素晴らしい人だった」と明かす。みそ汁や春巻が特にお気に入りだったといい、自身の料理教室にも参加してくれたという。

 黒滝村森林組合の現場作業員、梶谷哲也さん(44)が岩田さんに指導したのは、木の上で伐採する熟練の技。岩田さんは地上約10メートルの高さにもひるまず挑戦したといい、梶谷さんは「木の上は不安定で怖かったと思うが、飲み込みが早く、本職に近づいていたほど」と太鼓判を押した。その上で「河瀬監督の感性で描かれた吉野は本当に美しく、この映画が吉野の山を守るきっかけになれば」と期待を込めた。

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 京都府木津川市のイオンシネマ高の原で8日、「Vision」の初日舞台あいさつがある。午前11時15分からの上映が終了後、午後1時50分からの上映が始まるまでの約30分間に観客を入れ替えて行う。ビノシュさん、永瀬さん、河瀬監督が登壇予定。料金は全席指定2千円(税込み)。問い合わせはイオンシネマ高の原(電)0774・71・9545。