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【ZOOM東北】山形発 長井市訪れる外国人増加 「けん玉」で地域おこし

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【ZOOM東北】
山形発 長井市訪れる外国人増加 「けん玉」で地域おこし

 何を起爆剤として、地域おこしにつなげ、永続的に地域を支えていくか。地域や自治体が頭を悩ませるなか、競技用けん玉の生産量で日本一を誇る長井市では、他県の団体などともつながりながら、けん玉をテコとした地域おこしが進んでいる。(柏崎幸三)

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 同市では5月12、13日の両日、一風変わったイベント「けん玉の日2018 in長井」が開かれた。「道の駅川のみなと長井」を会場に、子供から大人まで約300人がけん玉を手に「とめけん」「灯台」などの得意技を披露。14日の「けん玉の日」にちなんで行われたイベントだ。

 主催したのは、けん玉普及活動を進める「グローバルけん玉ネットワーク」(GLOKEN、長野県松本市)。代表理事の窪田保さん(36)は世界的なけん玉プレーヤー。かつて国際協力機構(JICA)職員としてアフリカ・モザンビークで子供たちに理数科を教える傍ら、けん玉も指南。イベント開会式で窪田さんは「けん玉の聖地、長井市がけん玉で輝くことで私たちも飛躍できる」と、裾野拡大に期待を込めた。

 ◆16世紀からの歴史

 けん玉の最古の記録は16世紀に遡(さかのぼ)る。アンリ3世統治下のフランス。街角で遊ぶ子供たちが「ビル・ボケ」という、けん玉に似た玩具に興じるのを見て、いつしか王宮でも遊ばれるように。南米やアラスカにもけん玉と似た玩具はあり、日本には文化6(1809)年に物された図解書「拳会角力図会(けんさらえすまいずえ)」(義浪編)に記されている。

 現在のけん玉は、大正7(1918)年、広島県呉市の江草濱次(はまじ)氏が、剣と玉しかない玩具に皿の部分を取り付けた「日月(にちげつ)ボール」を考案したことに始まる。GLOKENは、日月ボールが実用新案に登録された5月14日を「けん玉の日」にしようと日本記念日協会に申請、昨年2月に制定された。

 ◆試行錯誤の末に

 病気療養中、けん玉で遊ぶことで復調した童話作家の藤原一生(いっせい)氏。昭和48年に木地玩具製造の山形博進社(現山形工房)を訪ねた。さまざまな技ができる競技用けん玉を作りたいと、藤原氏は同社の鈴木輿三郎さん(83)に相談。鈴木さんは20種以上の木材を試し、硬さ、音の響きなど高精度の競技用けん玉「富士」を完成させた。

 同社の梅津雄治社長(32)は「求められたのは、0・1ミリ単位の精度」と、製造の難しさを語る。

 平成26年4月、長井市の内谷重治市長(62)が市制60周年に合わせ、「けん玉のふる里プロジェクト」をスタート。これに反応したのが日本けん玉協会長井支部長の斎藤直樹さん(73)だった。

 4年の「べにばな国体」開会式で、けん玉パフォーマンスを披露した地元小学生から6人を「べにばなレジェンド」に任命。その一人、川村龍介さん(38)は「けん玉で世界一を」とギネス記録挑戦を呼びかけ、子供からお年寄りまで114人の連続技を達成、公認された。川村さんは「やったことのない人を巻き込んで達成した価値ある記録」と振り返る。

 ◆レジェンドも一役

 地元商店街でもレジェンドが寄贈したけん玉による地域おこしが始まっている。店指定の技ができると客にサービスする「けん玉チャレンジ」が29年にスタート、顧客増に一役買う。

 12、13日のイベントで売り上げが倍増したパン工房「木村家本店」の深沢賢一専務(45)は「けん玉を首にぶら下げて歩く外国人など、これまで見られなかった」と話す。動画サイトで「けん玉はクール」と広まり、市を訪れる外国人が年々増加している。

 27年には、市がけん玉広場「SPIKe」を開設。けん玉ワールドカップ2014で3位と、実力派の秋元悟さん(34)がけん玉を指導。「段位取得に来る人が県外からも増え、年々倍増しています」

 競技用けん玉の生産量日本一の地、という利を生かした地域おこし。けん玉の技を磨くように、静かに、それでも着実に光が当たり始めている。