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【翼の未来 成田空港40年】(下)地域との共生共栄 訪日客誘致にアクセス改善急務

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【翼の未来 成田空港40年】
(下)地域との共生共栄 訪日客誘致にアクセス改善急務

 「空港づくりは地域づくりであるという共生共栄の理念の下、『成田空港が本当にあってよかった』といわれるような存在に成長、進化してまいりたい」。開港40周年を2日後に控えた18日、成田国際空港会社(NAA)の夏目誠社長は空港第1旅客ターミナルで行われた航空安全祈祷(きとう)会に臨んだ後、そう抱負を述べた。

 この日はNAA主催の記念パーティーも成田市内で開かれ、出席した森田健作知事は「開港前後には悲しいことやトラブルもあったが、それを一つずつ乗り越えてきた。これで安心してはいけない。羽田と協力して日本の、アジアの表玄関をしっかりと守らなければならない」と気を引き締めた。

 ◆恩恵の格差是正

 開港40年の節目に始まった空港機能強化の取り組みに、県財界は大きな期待を寄せる。県経営者協会の諸岡靖彦副会長は今月10日、県に提言書を提出し、「成田空港のさらなる機能強化は国内外の空港間競争に勝ち抜き、地域に大きな経済効果をもたらす」と機能強化の早期実現を求めた。

 この中で諸岡氏は、「今回の機能強化を機に、空港の東側、南側も含めた一体的な発展につなげないといけない」とも強調した。40年前の開港以来、空港立地による固定資産税収入や人口増加などで発展を続ける成田市。これに対して、空港東側の多古町や南部に位置する横芝光町などは騒音の対価となる“恩恵”が少なかった。「東西格差」「南北格差」といわれる地域間格差に不満を抱く住民の声も根強い。

 今回の機能強化策のような重要課題を議論する4者協議会は国、県、NAA、周辺9市町で構成される。「成田空港圏」とも呼ばれるこの9市町(成田市、富里市、香取市、山武市、栄町、神崎町、多古町、芝山町、横芝光町)の間では、成田市以外の多くの自治体が人口減少や財政難などの問題を抱えているのが実情だ。

 山武市は4月の市長選で初当選した松下浩明市長が「全ての政策が人口減対策につながらなければならない」と訴える。同市は合併で誕生した平成18年に約6万人だった人口がこの12年間で9千人減少した。小中学校の統廃合が検討されるなど、少子化も深刻な問題となっている。

 富里市は財源不足を理由に、今年4月から1年間、市職員の給与や地域手当をカットすることで約1億円を捻出する。隣接する不交付団体の成田市とは財政事情が対照的だ。

 ◆チャンス逃すな

 こうした中、急務となっているのが急増する訪日外国人客(インバウンド)を空港周辺の観光地に呼び込み、地域の経済発展につなげるための取り組みだ。

 匝瑳市で農業資材の通信販売や農産物加工事業などを手掛けるアイ・エイチ・エスの石井一孝社長は1年半前、全国各地の食料品を集めた免税店を市内にオープンさせた。成田空港から車で約40分。周囲に観光地もない田畑に囲まれた場所だが、石井社長は「空港からの直通バスを運行させることで訪日外国人客を呼び込み、地域の交通アクセス改善にもつなげたい」と展望を語る。

 とはいえ、バスの定期運行については「まだまだ企業として力不足」と、運用コストの壁に直面している。ただ、「東京五輪以降も訪日客は増え続ける。このチャンスを逃さないためにも、今のうちに手を打っておかなければ取り残されてしまう」との危機感は強く、事業の早期実現を目指している。

 空港南側にある横芝光町は第3滑走路の供用後、市街地を含む町内の広範囲が騒音の影響を受けることになる。このため機能強化の協議では住民の反発が強く、町は9市町間の合意に最後まで慎重な姿勢を示していた。

 第3滑走路は国やNAAがおおむね10年後の完成を目指すとしているが、騒音下となるJR横芝駅周辺に住む60代の男性は「高齢化率が4割を超えるこの地域で、10年後の話は見えてこない。ただ、次世代の若者や子供たちのためにも、今のままでいいのかという思いがある」と話す。

 成田空港を取り巻く歴史的転換期の中で、空港との共生共栄を図る地域の模索は続く。(城之内和義)