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【企業訪問 製茶編】丸松製茶場(菊川市西方) 体験型カフェで市場開拓

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【企業訪問 製茶編】
丸松製茶場(菊川市西方) 体験型カフェで市場開拓

 JR菊川駅近くに目を引く外装の建物がある。ガラス張りの正面には茶碗(ちゃわん)に浮かぶ茶柱をイメージした木の柱があしらわれている。一見、茶のイメージとかけ離れたおしゃれな店舗が、明治32年創業の老舗「丸松製茶場」が運営する「サングラムグリーンティ&ガーデンカフェ」だ。

 平成27年にオープンした同カフェは単一の茶葉で提供する“シングルオリジン”が特徴。お茶は一般的に、製茶問屋が複数の生産者の荒茶を買い付けて混ぜ合わせ、袋詰めして小売りに卸す。同カフェではあえてブレンドすることなく、単一の生産地の茶葉を提供している。

 近年流行している、地域ごとに異なるコーヒーの風味や味わいを楽しむ“サードウエーブコーヒー”のように、お茶でも生産者ごとの味わいを楽しんでもらおうという試みだ。

 「袋を見ただけで味は分からない」。丸松製茶場の6代目、佐野晋介社長(48)が同カフェを設立したきっかけだ。佐野社長が数百軒の小売店を回るうちに、袋詰めが店頭に並んでいるだけの販売方法に疑問を持ったという。体感してもらうカフェならば、お茶の価値が伝わると考え、より個性が際立つシングルオリジンを売りにしたカフェの展開を考えた。

 同カフェでは「体験型」を重点コンセプトの一つに据えており、お茶を注文すると店員が1杯ごとに丁寧に煎れながら注文した茶葉の特徴などを説明する。「説明を受けて、見て、飲んでという仕掛けを作った」と佐野社長。煎茶(せんちゃ)を入れる体験講座も開くなど、体験を通してお茶と客の距離を近づけることを狙う。

 「体験型」にこだわるのは「高いお茶を買ってもらわなければ、茶業界は食べていけなくなる」という危機感があるからだ。茶市場は現在、安価な二番茶などが堅調な一方で、高級な茶葉が低迷しているという。普段、急須でお茶を飲む機会が少なくなったと言われる中で、競合していては業界が困窮するばかり。カフェの展開が新たな客層に高級なお茶を楽しんでもらい、市場開拓につながるという認識だ。

 昨年9月末には静岡マルイに2号店をオープン。“サングラム”ブランドの茶葉販売も注目を集め、今や東京都内の百貨店などから出店依頼が舞い込んでいると佐野社長。「従来のお茶とは違ったところに興味を持っていただけている」と手応えを感じている。

 今後は海外市場の開拓も視野に入れる。「海外は健康に良くて、いいものだと評価してもらえる。地元の生産者とタッグを組んでやっていきたい」。静岡のお茶を世界へ発信し、茶業界全体を盛り上げていきたいと思いをはせる。

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 【イチ押し!】シングル茶葉詰め合わせ

 佐野社長が「生産ごとの味の違いを知ってもらうには一番」と薦めるのは「シングル茶葉詰め合わせ」。5杯分に当たる15グラムの少量パックとなっており、菊川市で盛んな深蒸し茶など日本茶9種類と紅茶1種類の計10種から自由に組み合わせることができる。3種入りと6種入りがあり、値段はそれぞれ1080円と2160円。

 人気が高いのが、渋みが少なく味のバランスが良い深蒸し茶・菊翠(菊翠茶農業協同組合)やうまみ成分が強い玉露・前島東平(生産者同名)。茶葉は全てカフェで注文できる。お店で気に入った茶葉を購入するもよし、試せなかった茶葉を自宅で楽しむもよし。

 パッケージはスタイリッシュなデザインとなっており、ギフトにもお薦めだ。(石原颯)