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【みちのく会社訪問】石巻工房(宮城県石巻市) 「変態家具」DIYで生む温かさ

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【みちのく会社訪問】
石巻工房(宮城県石巻市) 「変態家具」DIYで生む温かさ

 世界中から注文が届くDIY(Do It Yourself=自身でやる)家具メーカー。シンプルで普遍的なデザインは、屋内外問わず幅広いシチュエーションにフィットする。

 “A”の形のスツール、ベランダなどの柵に掛けるミニテーブル…。千葉隆博社長(46)はそれらを「変態家具」と呼ぶ。開発する国内外のデザイナーたちは、東京の展示会へ出品する機会ごとに「ノリのデザイン」を繰り返し、次々と新たな商品を生む。単純ながらも「アートに近い」(千葉社長)といい、Yahoo!本社(東京)などのオフィスやカフェからの発注が多い。

 素材は主にカナダ産レッドシダー。柔らかく傷つきやすいため家具には向かない一方、耐久性と加工性に優れる。ホームセンターにもある規格材(2×4など)を多く仕入れ、使用する道具も容易に入手できる。ワークショップを通じて工法を教え伝えることもある。

 背景にはあるのは「制約」だ。東日本大震災の被害を受けた石巻では畳をドア代わりにする家もあった。物資がない中での復旧には「ノウハウを作ったほうが早い」と、知人の建築家が工房を設立した。当時すし職人として渡米する予定だったが、ビザが下りるまでアルバイトとして手伝った。

 震災のあった平成23年、仮設の野外映画館での上映会で使われたベンチがあった。国内のレッドシダー協会から材料提供を受け、地元の高校生と手作りした「ISHINOMAKI BENCH」。これこそ、誰もが作れるデザインの出発点。DIY精神から生まれる温かさが、親しまれる理由だろう。(千葉元)

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 ◆企業データ

 宮城県石巻市渡波字栄田164の3(電)0225・25・4839。平成23年に立ち上げ、25年に法人化。資本金630万円。従業員数4人。当初はハーマンーミラー社と協働。素材指定、商品の特注も。http://ishinomaki-lab.org/

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 ◆千葉隆博社長(46) 震災関係ない 「もの」で勝負

 --すし職人として、渡米しようとしたが

 「地元のFMラジオで、米メーン州の夫妻が『すしを握ったことがあり、3年間家族で来られる人』を募集している、と妻が聞いて応募してみた。しかし、現地では『すし』があまり知られておらず、『板前とはなんだ、ウエイターか、では自国民を使え』と却下されて、就労ビザは下りなかった。今はこれでよかったかなと思っている」

 --ものづくりの原点は

 「小さいころ、ものを分解したり、改造したりするのが好きだった。冷蔵庫などの家電とか。昔のものはドライバーがあれば分解できた。仕組みがあればものは直せると学んだ」

 --被災地発のメーカーだが

 「平成24年になって、ウェブサイトで震災を前面に出すのをやめた。海外ではデザインを見て判断されるし、石巻だと言っても「なんじゃそりゃ」という感じ。日本でも分かる人がいるのは関東まで。ストーリーは残して説明もするが、結局はもので勝負」

 --海外での展開は

 「イギリスとシンガポールのショップに置いている。フィリピン、香港でも『売りたい』『作りたい』という声がある。たまにインターネットで類似品を見かけて、まねしたにしてはごつすぎたり、『いいじゃん、全然使えるじゃん』というものもあって面白い」

 --工房の今後は

 「働くみんな、買ってくれる人みんながハッピーならいい。いかに楽しく金もうけするかの実験というか、仕事を面白いと思ってもうけられればいいかな」

 =おわり