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「漆」再興に二戸市懸命 文化財修復需要増で生産の3倍注文

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「漆」再興に二戸市懸命 文化財修復需要増で生産の3倍注文

 国産漆の7割を生産する二戸市が、需要の急増に頭を悩ませている。国が寺社など文化財の修復に国産漆を使うよう求めているためで、昨年度は生産量の3倍の注文が殺到。市は漆林の再生や若手の育成に取り組み、安価な輸入品に押されていた主要産業の再興に懸命だ。

 「このチャンスになんとか増産したいが、生産が全然追いついていない」。市漆産業課の大平隆義主任(39)は苦悩をにじませる。昨年度は市の生産組合に対し全国の寺社や漆精製業者から2・8トンの注文があったが、生産できたのは1・0トンにとどまった。

 背景にあるのは、文化庁が平成23年、国宝や重要文化財の修復に国産漆を使うよう求める通知を出したことだ。当初は上塗りと中塗りのみが対象で、30年度をめどに下地を含めた100%国産化を目指すとしており、今後は需要がさらに増える可能性もある。

 二戸市の漆は、世界遺産の中尊寺金色堂(岩手県)や日光東照宮(栃木県)などに使われてきたが、近年は生産量が減少。漆は採取する人によって光沢が変わり、熟練の技術が必要なため、職人育成には時間がかかる。原木も、樹液を採取できるまで15年かかり、高齢化で荒廃した林の再生は一朝一夕にはいかない。

 対応を急ぐ市は本年度、27年度予算の6倍となる約1億4千万円を漆の関連事業に計上した。地方に移り住んで活性化に取り組む「地域おこし協力隊員」を起用した職人育成や、地元企業と協力した植栽に取り組む。「地道に足元を固めていくしかない」と大平主任。現在26人の職人を5年後には40人に、約16万本の原木も18万本に増やす目標を掲げる。

 若い芽も育ち始めている。漆かき職人を目指す地域おこし協力隊の千葉裕貴さん(34)は昨年、北海道北見市から移住し、職人から技術を学ぶ。「仕事は大変だが、若い世代がこの町を支えたい」と力を込めた。