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ふくおかFG、十八銀行経営統合実現へ最後の策は「債権譲渡の積み増し」

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ふくおかFG、十八銀行経営統合実現へ最後の策は「債権譲渡の積み増し」

 ■公取委「まだ不足」、厳しさ崩さず

 経営統合を目指すふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀行は、公正取引委員会の承認を得ようと、債権譲渡の積み増しを図る。対する公取委は判断を先延ばししつつも、「まだ不足」との姿勢を崩さない。統合の基本合意から2年以上が経過した。最後の策が空振りすれば、計画の白紙撤回が限りなく近づく。 (村上智博)

 「銀行側には競争上の懸念があると伝えてきた。それを解消する具体的な提案があれば、その内容が適当か判断する」

 公取委の山田昭典事務総長は25日、記者会見でこう述べた。

 平成28年6月の審査申請以来、公取委は統合に難色を示し続ける。ふくおかFG傘下の親和銀行(長崎県佐世保市)と、十八銀行が統合すれば、長崎県内の貸出金シェアは単純合算で7割に達する。公取委は銀行サイドの力が強くなりすぎ、金利上昇や貸し渋りにつながると懸念する。

 特に、資金調達の手段に乏しい中小企業にとって、影響は大きい。長崎市内のある船舶関連会社の幹部は「統合直後は金利を引き上げなくとも、いずれはビジネスのために上げてくる。1つの銀行に生殺与奪の権を握られるのは怖い」と語った。

 公取委は平成28年5月、長崎県内の企業3千社に対しアンケートを実施した。

 「融資条件が悪くなれば他に借り換えを検討する」との回答は3割にとどまった。大半は借入先の選択肢がなく、条件が悪化しても、引き続き統合会社から借り入れるしかない。

 公取委は、ふくおかFGなどの要望に沿って、今年2~3月にも調査対象を4400社に増やし、アンケートを実施した。2回目のアンケートの詳細な結果は公表されていないが、公取委幹部は26日、「分析結果は前回と大差ない。借り換えを検討するのは同じく3割程度だった」と明かした。

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 ふくおかFGと、十八銀行が統合にこだわるのは、長崎の金融市場が、急速に縮むからだ。

 十八銀行の森拓二郎頭取は「長崎県の人口減少は、九州で最も早く進んでいる。今は130万人台だが、100万人を切る時代も来る。統合で経営体力を温存しなければ、顧客を助けられない」と訴えた。

 この両者を金融庁が後押しする。今月11日、金融庁の有識者会議は「経営余力があるうちの統合が、地域経済にとって望ましい」との報告書を公表した。この有識者会議に、金融庁は長崎県では地銀1行でも、存続が難しくなる、との試算を提出した。

 麻生太郎金融担当相は「銀行はつぶれても公取委は責任を取らない」(今月3日)と発言した。菅義偉官房長官も、12日の記者会見で、地域金融機関のあり方について「政府全体で議論する必要がある」と述べた。

 こうした援護射撃に、ふくおかFGの柴戸隆成社長(福岡銀行頭取)は「今の金融環境では、経営統合が良いことだ。これから逆襲だ」と強気を口にした。

 それでも公取委は「私たちは、国際ルールに則って審査している」(幹部)と、厳しい姿勢を変えない。

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 ふくおかFGと十八銀行は、債権を他金融機関に譲渡することで、貸出シェアを引き下げ、公取委の了承を得ようとする。昨年5月、数百億円規模の債権譲渡が可能だと判断し、公取委に報告した。

 これに対し、公取委は1千億~2千億円程度の債権譲渡を求めたとみられる。

 債権譲渡には、取引先企業の同意が欠かせない。ふくおかFGと十八銀行は、譲渡額の上積みを目指して、取引先1万数千社の意向確認に取り組む。

 調査には大型連休前後から1カ月程度をかける。両者は公取委に対し、意向調査の結果を踏まえて、統合計画案を練り直すと伝えたという。

 公取委幹部は「両者とも、ようやくまじめに考えるようになったが、このままでは問題解消措置は不十分だろう」と語った。

 銀行側が今後、短期間で顧客の同意も取り付け、公取委との溝を埋めるのは至難の業だ。さらに債権譲渡には、引き受け手である他の金融機関の了解も必要となる。

 引き受け手として、長崎銀行を傘下に持つ西日本フィナンシャルホールディングス(FH)などが有力視される。だが、同社首脳は「譲渡の打診はまだない。仮にお願いされても、簡単に『はい、分かりました』とはいかない。これまでもいろいろと振り回された経緯もある」と話した。

 債権譲渡の上積みが厳しければ、統合計画は窮地に陥る。公取委が「改善されない」と判断して、審査を打ち切り、排除措置命令を出す可能性も、現実味を帯びる。

 公取委は早ければ夏にも、統合について結論を出す。