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曽爾米で焼酎 仕込み始まる 葛(かずら)地区の有志「若者に職場を」 奈良

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曽爾米で焼酎 仕込み始まる 葛(かずら)地区の有志「若者に職場を」 奈良

 曽爾村の葛(かずら)地区で、村のブランド米「曽爾米」を使った初の焼酎造りが始まった。計画が動き出してから約1年半。メンバー全員が酒造り経験のないゼロからのスタートだったが、今年2月、ようやく仕込みにこぎ着けた。村特産の米焼酎「鎧(よろい)」は夏ごろの販売を目指す。

 国の天然記念物に指定されている勇壮な岩山「鎧岳(よろいだけ)」がそびえる葛地区に村唯一の「米焼酎蒸留所」がある。

 3月末の午後、蒸留所の中には米の蒸し上がるふくよかな香りが漂っていた。「今から米を冷ます作業をするよ」と、農事組合法人「ゆめの里かずら」の穐西(あきにし)善和理事長(68)が仕込み室に招き入れてくれた。蒸し上がったのは、焼酎の主原料となる村のブランド米「曽爾米」。食べてみると、噛むほどにまるい甘みが広がった。白い湯気をあげる米を台の上で均一になるよう広げながら熱を冷ます。一定温度になったところで、麹などで作った「一次もろみ」のタンクの中へ。「二次もろみ」をつくる作業だ。これを発酵させて蒸留、熟成させれば、米焼酎が完成する。

 同法人は平成28年8月、焼酎造りのために、葛地区の有志27人で立ち上げた。村では集落ごとの地域資源を生かす地方創生事業を行っており、曽爾米もその一つ。山の湧き水でつくる減農薬の特別栽培米で、米のまろやかな甘みを生かす新商品として、焼酎に白羽の矢が立った。

 法人のメンバーは空き倉庫を自分たちで改築して蒸留所を作り、県外の米焼酎製造会社で研修を受けて昨夏から仕込みを始めようとしたが、予想外の事態に見舞われた。酒造りに必要な酒造免許の認可がなかなか下りなかったのだ。メンバーは普段、郵便局員や園芸農家として働いていて、酒造りに関しては全員が素人。「米を準備すれば作れると思っていた」(穐西さん)が、実際は煩雑な手続きが必要だった。

 今年2月15日にようやく免許を取得。念願の焼酎造りが始まったが、作業は想像以上に大変だった。発酵に必要な温度と湿度を一定に保つ必要があるが、曽爾村は昼夜の寒暖差が大きく、調整が難しい。穐西さんは車の整備業を辞め、毎日つきっきりで作業にあたっている。商品が完成し売れるまでは無給だが、「焼酎づくりはおもしろいし、やりがいがある」と語る。

 商品名は鎧岳にちなみ「鎧」と決めた。完成すれば、村の特産品として全国に発送する予定だ。焼酎造りに賭けるのには、こんな思いもある。穐西さんは言う。「村には仕事がないから、人が村外に出ていく。若い人たちの仕事づくりとしても、この焼酎を必ず成功させたいんです」