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地域経済支え110年 佐賀・広滝発電所を初公開 難工事、先人の思い伝える

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地域経済支え110年 佐賀・広滝発電所を初公開 難工事、先人の思い伝える

発電所内部の設備に見入る見学者ら=佐賀県神埼市 発電所内部の設備に見入る見学者ら=佐賀県神埼市

 九州電力佐賀支社は1日、水力の「広滝第一発電所」(佐賀県神埼市)を、初めて一般公開した。1908(明治41)年10月に運転を始めた、佐賀では最も古い水力発電所で、110年を迎えてもなお、現役で動く。今年は明治維新から150周年にあたり、大規模な難工事に挑んだ先人たちの思いを伝えようと企画した。(九州総局 高瀬真由子)

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 高低差175メートルの水路を川の水が一気に駆け下り、発電機のタービンを回す。

 参加者はこの日、取水口から発電所までの2700メートルの水路をたどり、発電所内部では、水車や発電機が回る様子を間近で見学した。

 九電や佐賀市のNPO法人「みなくるSAGA」の本間雄治理事が、発電の仕組みや、重機がない中での建設工事の苦労について説明した。

 息子2人と参加した神埼市の自営業、本間綾さん(43)は「身近な川の水を、勾配を使い発電するという知恵はすごい。建設に至るまでの先人の苦労や心意気を学べて、勉強になった」と満足した様子だった。

 週末の2日間で、計約130人が見学した。

 発電所は福岡、佐賀の県境に位置する脊振(せふり)山地内にある。出力は2150キロワットと小規模だが、110年間稼働を続け、現在はベースロード電源の役割を果たす。九電の社員は常駐はせず、遠隔操作で動かす。

 佐賀の実業家、牟田萬次郎(むたまんじろう)(1860~1923)が建設を主導した。

 明治時代は石炭を燃やす火力発電が主流だった。牟田は将来の電力需要の高まりを見据え、水力での発電に着目した。

 資金集めや建設工事は苦難の連続だった。

 最寄り駅から山あいの建設地に資材を運ぶのに、連日100台を超える馬車の列ができた。作業員らはツルハシやスコップを片手に工事を一歩一歩進めた。

 発電所が完成すると、現在の佐賀市や神埼市エリアに約8千灯の電気が灯(とも)った。総出力は現在の半分の1千キロワットだったが、当時の水力としては九州最大規模で、北部九州に本格的な電気時代が到来した。

 電力の近代化に貢献した牟田は、進取の気性を持った実業家として今に語り継がれる。

 九電佐賀支社の村上俊樹技術部長は「苦難を乗り越えて造られた発電所が今も実際に動き、建設に関わった人たちの思いを、社員が引き継いでいる。地域の特性を引き出しながら電気を生み出している発電所があることを知ってほしい」とPRする。

 同支社(佐賀市神野東)は、明治維新150年の節目に合わせ、電気の歴史を語り伝えるプロジェクトを推進する。

 支社内ではパネル展を開催している。広滝第一発電所をめぐる建設物語を漫画で紹介し、VR(仮想現実)で発電所などを紹介するコーナーもあり、エネルギーの理解を深めることができる。