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安倍首相を代えて良いのか? 政権復帰後の5年間

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安倍首相を代えて良いのか? 政権復帰後の5年間

政権運営で正念場を迎える安倍晋三首相=27日、首相官邸(斎藤良雄撮影) 政権運営で正念場を迎える安倍晋三首相=27日、首相官邸(斎藤良雄撮影)

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)をめぐり、安倍晋三政権の支持率が低下している。国会前には退陣を求める市民団体が集まり、野党と一緒に気勢を上げる。だが、北朝鮮による拉致被害者の帰国を待ちわびる家族や、看板の経済政策「アベノミクス」を追い風に企業のかじを取る経営者には、政権が倒れることへの懸念が大きい。

 「今まで9人の首相と会ったが、拉致問題に最も熱心に取り組んでくれているのは安倍首相だ。米トランプ大統領が昨年9月の国連総会で日本人拉致事件を糾弾する異例の演説を行ったのも、首相の強いアピールがあったからこそだ。トランプ氏の訪日時には、家族会との面会も実現した。首相が千載一遇の好機を作ってくれた」

 昭和53年8月、鹿児島県日置市から北朝鮮に連れ去られた市川修一さん(63)=拉致当時(23)=の兄、健一さん(72)=鹿屋市輝北町=はこう語る。その上で「安倍政権が代われば、また振り出しからだと思うと、心が重くなる」と言葉を続けた。

 帰らぬ弟を待ち続けて40年が過ぎた。市川氏には野党の姿が歯がゆい。

 「今の国会は、スキャンダルで政権の追い落としだけを図っているようだ。森友問題で見せるあの勢いを拉致問題に向けてくれたら解決に近づくはずだが、野党には関心がないようだ」

 首相が掲げる「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を評価する人は多い。

 福岡有明海漁連(柳川市)の西田勝征会長は「米朝首脳会談など今後の国際情勢を考えると、当分は安倍さんでなければいけない。世界を相手に、これだけの人的ネットワークを持つトップはそういない」と述べた。

 日露首脳会談(平成28年)の舞台となった山口県長門市にある斎木病院の斎木泰彦院長は「各国の首脳とどんなタイミングで会うかという突破力は、歴代首相に比べてもずば抜けていると感じる」と話す。

 ●良い状況続く

 首相は、第2次政権の発足以来、経済成長を政策の最優先課題に掲げる。

 西日本鉄道の倉富純男社長は「アベノミクスで景況感は良い状況が続く。インバウンド(訪日観光)なども国の大きな戦略が効き、これから先、もっと成長すると思う」と語る。

 財務省の文書改竄については「役所のあり方について、正すものは正す必要があるが、日本経済という視点は忘れてはならない。成長に水を差さないことが大事だ」と語った。

 福岡商工会議所の礒山誠二会頭は、「経済政策はうまくいき、拡大基調に入った。今後は、金利の引き上げを含めた出口戦略をどうするかが課題だ」とし、政策の持続性を求める。

 アベノミクスの大きな柱の1つが金融緩和だ。日銀は平成28年からマイナス金利政策を取る。実体経済に資金を回りやすくする目的だが、金融機関には大きな打撃となった。

 西日本シティ銀行もまた、マイナス金利政策の悪影響に苦しむ。それでも谷川浩道頭取は「それなりに経済は伸び、需給ギャップがプラスになった。腰折れしそうな経済を、今まで安定的にもってきたのは事実だ」と、首相の経済政策を評価した。

 その上で、「先行きに安定感の持てる政策がなければ、消費者は自己防衛的に消費を抑制する。そうはならない政策展開に期待したい」と注文を付けた。

 首相の悲願である憲法改正に期待をかける保守派も多い。だが、支持率の下落で国会発議のスケジュールは不透明になりつつある。

 産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)の世論調査の結果では依然、内閣支持率は不支持率を上回っているとはいえ、直近(10~11日)で6ポイント下がっている。

 憲法改正を目指す「美しい日本の憲法をつくる熊本女性の会」運営委員長、高原朗子氏(熊本大教授)は「ここ数年でやっと憲法改正に向けた議論が動き出したのに、前に進まなくなるのが心配だ。与野党関係なく、議論するのが大切だ」と語る。

 高原氏は森友学園をめぐる問題追及に力を入れる野党や一部のマスコミの報道ぶりを、「改憲への動きを止めようと、政権を倒すためだけにやっている感じを受ける」と指摘した。

 ●「疲れ」

 首相の政権運営や政策への賛否はさまざまある。

 英フィナンシャル・タイムズは、韓国・朴槿恵(パク・クネ)前大統領時代に反日にいそしむ韓国を揶揄する意味で使われたKorean fatigueをもじって、「安倍疲れ」(Abe fatigue)との言葉で安倍政権を批判した。

 財務省による文書改竄は、国家運営の根幹に関わる問題だといえるが、日本が抱える課題は多岐にわたる。

 麻生太郎副総理兼財務相は今月19日から開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議への欠席を余儀なくされた。トランプ米政権が打ち出した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対応などをめぐり日本の存在感は低下した。

 27日には、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が訪中し、習近平国家主席と会談したほか、今後は日米首脳会談や米朝首脳会談も予定される。

 内政面では道半ばの景気回復に加え、人口減少社会となる日本のグランドデザインを描く必要がある。

 ポスト安倍をにらんで自民党の岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らの名前が取り沙汰されるが、実績もなく決め手を欠く。自民党福岡県連のある幹部は「トランプ氏やプーチン露大統領、終身の国家主席となった中国の習近平“皇帝”、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長らと彼らが渡り合う姿は想像できない」と斬り捨てる。

 わが国を取り巻く国際環境が激変、悪化しつつある中、いつまでもスキャンダル狙いの政治パフォーマンスにうつつを抜かす時間はない。古今東西、政治の安定こそが国民生活に幸せをもたらす。