産経ニュース

玄海原発3号機7年3カ月ぶり再稼働タブーなきエネルギー議論を

地方 地方

記事詳細

更新


玄海原発3号機7年3カ月ぶり再稼働タブーなきエネルギー議論を

 九州電力玄海原発3号機(出力118万キロワット、佐賀県玄海町)が23日、7年3カ月ぶりに稼働した。九電には、安全に原発を運転することで経営基盤を早期に立て直し、地域経済への貢献が求められる。一方、数十年先の将来を考えれば、原発新増設も排除しないエネルギー政策の議論を、今すぐ始めなければならない。 (中村雅和)

                   ◇

 「引き続き、国の検査に真摯(しんし)に取り組むとともに、工程にとらわれることなく安全確保を最優先に慎重に進めます」

 玄海3号機の再稼働を受けて、九電の瓜生道明社長が発表したコメントに、高揚感はなかった。

 平成28年に始まった電力小売りの完全自由化に加え、発送電分離など今後の電力システム改革という難題が、待ち構えるからだ。

 23年12月から27年8月までの約3年8カ月、九電の原発はすべて停止した。この間、経営の健全性を示す自己資本比率(単体)は、24・9%(22年度末)から、7・3%(26年度末)に急落した。

 川内原発再稼働後の27年度に最終黒字を確保し、自己資本比率も回復基調にある。玄海原発の再稼働によって、企業を中心に電気代値下げへの期待は高まる。

 だが、現実は厳しい。

 九電は25年、電気料金を本格値上げした。この料金体系は、原発4基稼働を前提にしている。前提が整うのは今年5月に予定する玄海4号機の再稼働後だ。

 27年度以降の黒字は、段階的な原発再稼働に加え、不要不急の設備修繕を後回しにするなど、乾いた雑巾をさらに絞るような努力を重ねた結果だ。

 さらに自由化後の顧客流出で、九電は消耗する。

 九電の苦境は、31年春の社員採用計画に現れた。採用数は前年の計画に比べ20人減の250人となった。

 全国の電力会社をみると、東北電力は15人増の295人の採用計画を立てた。同社の広報担当者は「自由化や発送電分離などの環境変化に対応するには、人材の確保が必要だ。財務状況の回復も背景にある」と説明した。福島第1原発事故を起こし、多額の賠償金を抱える東京電力でさえ、グループで40人増の320人を採用する。

 今後、エネルギー業界の競争は激しくなる。他社が人員を増やす中での採用数減少は、出遅れと言うほかない。九電の経営の不確実性は高まっている。玄海、川内両原発での「両翼飛行」によって経営基盤を固め、新規事業などで収益力を高める必要がある。

 その際は、福島の事故を教訓に、原発の安全運転はもちろん、屋内退避の有用性の周知など、不安払拭に向けた活動も欠かせない。

                   ◇

 ■「時間がない」

 政府が平成26年4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、今から12年後の42(2030)年の全電力量に占める原発比率を、20~22%と定めた。

 この数字を達成するには、原則40年間とした運転期間を、複数の原発で60年間に延長する必要がある。すでに関西電力の3原発が延長認可を、原子力規制委員会から受けた。

 日本の原発は、1980~90年代に稼働を始めたものが多い。運転期間を60年に延長したとしても、2040年代に、次々と廃炉の時期を迎える。

 この2040年代に一定の原発比率を維持するならば、原発の新増設が必要だ。反対に「脱原発」を目指すのならば、代替電源が必要となる。それも昼夜を通じて、安定して安価な電気を供給できる電源でなければならない。

 どちらの道を選ぶとしても、残された時間は30年しかない。

 九電が福島第1原発事故前に進めていた川内原発3号機増設の場合、平成12年9月に環境調査の実施を申し入れ、約20年後の31年度の運転開始を目指した。事前調整も含めると、一般的に新増設には30年ほど必要だという。

 玄海原発が立地する玄海町は今月19日、「安定かつ経済性に優れた電源を確保するためには、原発の増設またはリプレースが必要」とする意見書を全会一致で可決した。

 岸本英雄町長は「決して、原子力ありきではない。それでも九州のエネルギー事情を考えれば、新増設の議論はやらなければならない。もう時間がない」と語った。

 国民生活の基盤であるエネルギー確保は、国家が果たすべき大きな義務だ。電力会社任せにするのではなく、政治が原発新増設も含め、責任ある議論をしなければならない。