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103年ぶりの新種「クマノザクラ」 日当たり次第で「衰弱」も 今が貴重な観賞の時代

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103年ぶりの新種「クマノザクラ」 日当たり次第で「衰弱」も 今が貴重な観賞の時代

 日本の野生種の桜ではオオシマザクラ以来、103年ぶりの新種発見と発表された紀伊半島南部の「クマノザクラ」。地元では「早咲きのヤマザクラ」とされていたが、いったいどんな桜なのか。新種と確認した森林総合研究所多摩森林科学園(東京都)の勝木俊雄・サクラ保全担当チーム長による現地説明会(古座川町)を訪れた。

 ほかのヤマザクラなどとどう違うのか。最も分かりやすいのが開花時期の差だ。勝木さんによると、クマノザクラ以外、県内で確実に自生する桜はヤマザクラとカスミザクラの2種。古座川町で自生するクマノザクラは昨年、3月中旬から4月上旬に開花。その後自生のヤマザクラが咲き、植栽されたカスミザクラはヤマザクラに続いて咲いた。クマノザクラの通常の開花は早ければ2月下旬からとされる。

 葉の形状もクマノザクラの葉はヤマザクラやカスミザクラと比べ一回り小さい。卵形で、葉裏はヤマザクラが白っぽいのに対し、クマノザクラは淡緑色。カスミザクラも淡緑色という。勝木さんは「(クマノザクラは)ヤマザクラとはかなり違う。カスミザクラに近い印象がある」と話す。

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 「詳しく調べたのが2年間くらいなので十分ではないが」とした上で、勝木さんによると、クマノザクラは和歌山、三重、奈良の3県にまたがる南北90キロ、東西60キロに分布。標高は0~800メートルに自生し、大峰山系や護摩壇山などの標高1千メートルを超える山岳地で分布域が制限され、この山岳地の南が分布エリアとなる。

 勝木さんは「紀伊半島南部は、狭い地域に標高差がたくさんある場所が多く、雨量も多い。多様な環境が続いていることが理由の一つと考えられる」とする。

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 事前説明の後、参加者は同町池野山に自生するクマノザクラを見学した。学名を付けるために「タイプ標本」を採取した唯一の「タイプ木(ぼく)」で、樹高は約14メートル。細い枝ながら見事に花を咲かせており、まさに満開だった。

 この時期、山々の所々で花を開かせている自生のクマノザクラだが、長い年月でみると、非常に貴重なものであると勝木さんは話す。「クマノザクラの周辺には大木に成長する『シイ』などがあり、ほかの樹木が成長すれば、クマノザクラには日が当たらなくなり衰弱するでしょう。今はクマノザクラを見られる貴重な時代ともいえ、20~30年後には見られなくなるかもしれない」。周囲の木に比べ樹高が低い自生のクマノザクラは消滅していく運命にあるのだろうか。

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 花が咲くときに葉が出ないソメイヨシノと同じく、クマノザクラも葉は花よりやや遅れて出るため、花だけが目立つ観賞用に適しており、観光資源としても期待がかかる。

 「3月のクマノザクラ、4月の吉野山の桜とセットで観光の目玉になりうる」と勝木さん。「タイプ木」がある同町もさっそく、クマノザクラを「町の花」に新たに指定。観光や地域振興に生かしていく考えだ。

 勝木さんは「花は大きめでうっすらとしたピンク。私は『べっぴんさん』と呼んでいます」。苗木の検証が必要だが、高品質な種苗の普及が待たれる。