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【師道を志して 矢ヶ部大輔の一筆両断】教師は生き方で学ぶ意義示せ

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【師道を志して 矢ヶ部大輔の一筆両断】
教師は生き方で学ぶ意義示せ

 文部科学省は2月14日、高等学校の学習指導要領案を公表しました。中教審答申などでも言われてきた通り、総則においては主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善や、教育課程に基づき組織的かつ計画的に教育活動の質向上を図るカリキュラム・マネジメント等の考えが示されました。また、公民の新科目「公共」が設定されるなど、各教科・科目の構成がかなり見直されることに加え、これまでの総合的な学習の時間が総合的な探究の時間となります。教師は、そのねらいをしっかりと見ておく必要があります。

 総則の中で注目すべき点を3つ挙げたいと思います。

 1点目は道徳教育についてかなり踏み込んだ記述が見られるということです。小中学校で道徳が特別な教科となることから、いかに高校に接続するかが課題です。高校では「道徳教育推進教師」を中心に、指導の方針や重点、各教科・科目との関係を明らかにし、全教師が展開するとなっています。また、先に述べた「公共」「倫理」並びに特別活動について、人間としてのあり方・生き方に関する中核的な指導の場面であると記載されています。まずは中学校でどんなことを学んできたのか、高校の先生は見ておく必要があるでしょう。

 2点目は特別な支援を要する生徒への指導についての記述です。平成30年度より高校でも「通級」による指導が制度化されます。通級は通常学級に在籍しながら、子供の課題に応じて、特別な配慮のなされた指導を受ける制度です。また、不登校生徒への必要な支援について配慮を求めているのも、初めてのことだと思います。

 3つ目は「教科等横断的な視点」が強調されている点です。言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力など学習の基盤となる資質・能力について、それから次代の社会形成に向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力について、横断的な視点で教育課程の編成を図ることとされています。つまり、他教科と連携して力を育むことが求められているのです。

 この高校の学習指導要領は、今春小学校6年生となる児童が高校に入学する平成34年度から年次進行で実施となります。

 それまでの間、私たち教師はいかなることを考え、実践しなければならないのでしょうか。

 今回の改訂に際し、その理念を見ると究極的には生徒にいかに「学ぶことの意義」を見出させるかというところにポイントがあるように感じます。上級学校への入学をゴールとせず、「豊かな創造性を備え、持続可能な社会の造り手となる」ことが期待されているのです。

 知識や技能の習得、思考力・判断力・表現力などの育成、学びに向かう力、人間性等の涵養(かんよう)が求められていますが、生徒が「学ぶことの意義」を見出さなければすべて絵に描いた餅に終わってしまうでしょう。もちろん答えが一つのはずもなく、教えるマニュアルがあるわけでもありません。指導要領案では体験活動の重視、キャリア教育・職業教育の充実を求めていますが、これは手段にすぎないのです。

 学習指導要領は学校が編成する教育課程の大綱的な基準を示すものです。従って学校はそれぞれの実態を踏まえ、特色を示す教育課程を編成しなければなりませんし、教師の創意工夫も当然必要となります。

 その上で教師が為(な)すべきことは学習指導要領のねらいを理解した上で、その行間にあることも含め、自身の信念に基づいて学問を実践することではないでしょうか。

 教科・科目の構成の変更はあるにせよ、先達が築いてきた文化を子供たちに手渡すという行為に、変わりはありません。その際、感動のない伝え方では言葉は表面を通り過ぎていくのみです。言葉を発する教師自身が「学ぶことの意義」について自分なりの答えを持ち、言語化できない部分も含めて生き方を示すより他に方法はないように思えます。まさに「学は、人たる所以(ゆえん)を学ぶなり」です。

 私の連載は今回で最後となります。長い間、ありがとうございました。

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【プロフィル】矢ヶ部大輔

 やかべ・だいすけ 昭和43年福岡県柳川市生まれ。福岡県立伝習館高校、広島大学文学部卒。平成3年度から福岡県立高校英語科教諭。三池高校、伝習館高校などで勤務。24年度から福岡教育連盟執行委員長。