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【成田空港転換 新滑走路建設へ】(上) 恩恵具体化へ課題山積

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【成田空港転換 新滑走路建設へ】
(上) 恩恵具体化へ課題山積

 ■用地取得、地域振興、落下物対策…

 「まだ入り口。これからが大変」。成田空港の機能強化策の最終合意が確認された13日の4者協議会終了後、芝山町の相川勝重町長は表情を引き締めた。同町はC滑走路(3500メートル)の主な建設予定地。相川町長によると、約150戸700~800人の住民が移転対象となる。

 建設に向けて、成田国際空港会社(NAA)は環境アセスメントの実施や航空法の変更許可手続きなどを経た後、用地取得に着手する。協議会後の記者会見でNAAの夏目誠社長は「地権者と誠意を持って話し合い、用地取得にあたりたい」と述べ、C滑走路の完成時期については明言を避けた。国なども運用開始までに10年以上はかかると見込む。

 成田空港は開港前、建設予定地で未買収地を強制収用した県の行政代執行を発端に、反対闘争が激化した歴史がある。用地取得には慎重にならざるを得ないのが実情だ。

 相川町長は「これまでは抽象論だったが、具体論になるとさらに厳しい。県や空港会社とスクラムを組み、しっかりと責任を果たしていくのが町の役割」と重みをかみしめた。

 同じくC滑走路用地が含まれる多古町の菅沢英毅町長は「全戸移転が必要な地域もあり、移転先の住宅地開発を進めたいが、条件的に都市計画も含むことなので県の協力が必要。ただ、県の企業庁が廃止された状況の中で、用地確保をどうするか。その手法を詰めなければ」と、不安をのぞかせた。

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 機能強化に伴い、航空機騒音の拡大や落下物への不安が高まるなど、周辺住民のデメリットは小さくない。地元理解を得るための説得材料として、NAAや県は地域振興策を掲げ、住民説明会などでその“恩恵”を強調してきた。

 NAAが対象自治体に交付している周辺対策交付金は、現在の40億円から1・5倍の60億円に増額される。使い道の幅を広げた「地域振興枠」を設け、市町の財政状況を勘案して配分する。また、道路などのインフラ整備、企業誘致、観光・農業振興策といった事業に取り組むプランも作った。

 機能強化の合意に最後まで難色を示していた横芝光町の佐藤晴彦町長も「この機会に乗り遅れることなく、町の発展に向けた取り組みを行うため(受け入れを)決断した」と胸中を明かした。

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 一方、成田市の小泉一成市長は「成田空港の更なる機能強化を周辺全域の地方創生につなげたい」と期待する。しかし、これまで周辺自治体間には「南北格差」「東西格差」といわれる恩恵の差が指摘され、機能強化による「均衡ある発展」が実現できるかが焦点となる。

 航空機からの落下物対策も課題として残る。落下物被害が続発する地域からは、移転を求める声が上がる。ただ、騒音による移転対象から外れた地域では、抜本的な対策に見通しが立たない。ある首長は「国はこれまで『成田方式』といわれる破格の対策をとってきたので、これ以上の国の支援は望めないかもしれない」と案じた。

 機能強化により拡大する騒音や落下物被害といった負の側面と、均衡ある発展を目指した振興策とをいかに調和させるのか。用地取得とともに課題は山積だ。(城之内和義)

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 成田空港の機能強化策が地元合意し、年間発着枠の拡大(30万回から50万回)に向けて、3本目となるC滑走路新設や、B滑走路の1千メートル延伸などに向けた事業が動き出す。歴史的な転換点を迎えた成田空港に待ち受ける課題を報告する。