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「のらぼう菜」普及後押し 川崎市、農家収入増など期待

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「のらぼう菜」普及後押し 川崎市、農家収入増など期待

 「都市農業」の活性化を目指す川崎市は郷土野菜「のらぼう菜」に注目し、普及に力を入れている。市は県や大学とともに進めてきた栽培研究の結果をまとめた「栽培マニュアル」を発行。のらぼう菜の生産を拡大してブランド化を目指す方針だ。のらぼう菜は容易に栽培ができ、裏作による収入増も望めることから、農業関係者は市の強い後押しを受けて鼻息を荒くしている。(外崎晃彦)

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 のらぼう菜は小松菜や菜の花に似たアブラナ科の野菜。多摩、麻生など市中北部の各区で約170軒の農家が栽培を手がけており、作付面積は市内で計約2・6ヘクタール。年間の生産量は約10トン(平成25年度)で、1袋(約200グラム)が約200円程度で売られている。

 ◆メリットさまざま

 市がのらぼう菜の普及を後押しする背景には、栽培が容易で高齢農家でも参入しやすい▽休耕期に栽培できるため収入増につながる▽都市農業の活性化に寄与する-など、さまざまなメリットを見いだしているためだ。

 市農地課の担当者は「のらぼう菜は土壌を選ばず、比較的容易に栽培できる。高齢の農業者でも参入しやすい」と期待を込める。畑だけでなく、収穫を終えたあとの水田でも栽培できることから、裏作での栽培が可能なのだ。だからこそ参入によって農家の収入増が期待できるという。

 青菜類の少ない時期に旬を迎えることも強みだ。9月に種をまき、11月に定植、2月後半~4月中旬に収穫する。栽培から収穫まで、害虫の少ない寒い季節に完結するため、無農薬で栽培できる。

 一方、のらぼう菜の弱点は保存性。収穫後はしおれやすく、日持ちしづらい。販売は狭い地域にとどまらざるを得ず、保存長期化が課題となっている。その点で市内は消費地が近いため、日持ちの弱点を補いやすく、栽培に向いた土地ともいえそうだ。

 ◆マニュアル発行

 生産量拡大のため、市は27年春から3年計画で明治大学や県と共同で生産拡大に向けた研究を進めており、栽培方法をまとめたマニュアルを発行した。

 マニュアルでは、最適な収穫時期などを分かりやすく図説。鮮度を維持するための特殊フィルムも紹介している。市は今後、マニュアルをもとに、農業者にのらぼう菜栽培への参入を呼びかける方針だ。

 2月28日には研究に携わった大学や農業関係者らが市役所を訪れ、福田紀彦市長に収穫したてののらぼう菜とマニュアルを贈呈した。おひたしを試食した福田市長は「甘くておいしい。苦みもなく、これならきっと子供も食べやすい。川崎の郷土野菜として、一層の知名度向上に期待している」と関係者らを激励した。

 ◆栽培通じ地域交流

 市内では都市農業活性化の一環として、のらぼう菜の栽培を通じた農家と市民の交流が図られている。2月24日と3月3日の両日には多摩区で、親子を対象とした栽培講座と収穫体験を実施。多くの子供連れが訪れた。

 20日に麻生区で予定している収穫体験ツアーでは、今回初めて市立東柿生小学校の児童ら約80人が主催者側に加わる。ツアー参加者らに対して、児童らが里山を紹介する予定だ。

 市農業技術支援センターの小山孝所長は「栽培促進は住人、農家、行政のそれぞれにメリットがある。栄養価も高く、ブランド化の可能性を秘める野菜。栽培を積極的に広めていきたい」と意気込んでいる。

 のらぼう菜 川崎市多摩区をはじめとする市中北部の各地、東京都の西多摩地域、埼玉県中南部などで栽培されている地域野菜。苦みが少なく甘みがあり、みずみずしいのが特徴。おひたしやあえもの、天ぷらなどのほか、みそ汁の具にも使える。ビタミンや鉄分、食物繊維を豊富に含む。栽培の歴史は古く、江戸期の天明・天保の大飢饉(ききん)の際には多くの命を救ったといわれる。