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手仕事が生む「金物の美」 越前に専門店開業の小沢史郎さん

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手仕事が生む「金物の美」 越前に専門店開業の小沢史郎さん

 商品棚に整然と並ぶふすまの引き手や真ちゅうのフック、擬宝珠-。「小澤金物店」は昨年9月、越前市にオープンした手作りの伝統金物を扱う専門店だ。近年の古民家ブームを追い風に、主にインターネットを通じて全国に販路を広げる。「金物には空間を変える力がある」。店主の小沢史郎さん(28)は、手仕事が生み出す美の魅力を発信している。

 店では、たんすのつまみやのれん掛け、日本古来の建築物で使われる「和くぎ」や「くぎ隠し」といった神社仏閣向けの金物など約150種類をそろえる。全国の職人に製造を依頼した自社商品だけでなく、明治から昭和期にかけて製造された古い金物も取り扱う。客の多くは設計事務所や工務店で、茶室やすし店のような和風建築物で使われる。舞台やNHKの大河ドラマのセットで使用されたこともあった。

 20代の若者を金物業界に引き込んだのは、独特な文様の金物装飾が施された越前たんすだった。ものづくりが盛んな越前市で生まれ育った小沢さんはもともと木工芸品が好きで、大学浪人中、民芸運動を提唱した柳宗悦に傾倒。地元の工芸品を知ろうと、京都へ進学後、帰省してはたんすの工房を見て回った。次第に「木を引き立てる」金物部分に魅了され、越前たんすの様式調査に熱中した。

 卒業後は京都市の老舗金物店に就職したが、理想の店を追求したいとUターンし、平成28年3月にネットでの販売を開始。自宅では商品の保管が手狭となり、昭和初期のレトロな外観の薬店だった建物を購入し、そのまま店舗に。たくさんの引き出しがついた薬たんすは商品の保管に活用している。真ちゅうのコート掛けを手に「手仕事ならではの微妙な磨き残しがいいんです。きれいすぎると味気ない」と小沢さん。「金物は使うほどに光沢が出る。機械では出せないぬくもりを感じてほしい」と話した。