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【東日本大震災7年】自治体の試行錯誤続く 型通りの訓練…教訓生かすには 千葉

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【東日本大震災7年】
自治体の試行錯誤続く 型通りの訓練…教訓生かすには 千葉

 「こういった訓練をすることで、改めて津波の悲惨さを思い出すことが大事。続けて実施していく」。旭市で4日に行われた津波避難訓練で、明智忠直市長は海岸地区の参加住民らに呼びかけた。

 東日本大震災で最大7・6メートルの津波に襲われた旭市は、震災後の平成23年11月から津波避難訓練を毎年度実施している。初年度の訓練では約1千人の住民が参加、今年度も900人を超え、今後に備える市民の防災意識は依然として高い。

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 震災当日。旭市内では午後2時46分に震度5強を観測し、3分後には津波警報が発表された。市は3時に災害対策本部を設置。その後、大津波警報に引き上げられ、3時25分に避難勧告を発令した。市内10カ所に避難所を開設し、約3千人が一夜を明かした。この間、消防を含む市職員らが奔走した。

 「災害対応マニュアルの流れは分かっていたが、実際の経験はなかった。何を最優先にすべきか。全職員が手探りの中、無我夢中だったというのが本音」。当時、市の総務課長として全体を指揮した元職員の男性(66)はそう振り返る。

 市は震災前から、災害対策基本法に基づく地域防災計画を策定。この中で職員の初動対応マニュアルを作成し、緊急時には上司の指示を待たずに所定の行動がとれる態勢を構築していた。「マニュアルに書いてないことも多かったが、基本的な防災計画があったからこそ乗り切れた。普段の訓練が重要だと痛感した」と元職員の男性は語る。

 こうした被災自治体の経験を生かす取り組みが進んでいる。

 日立システムズ(東京都品川区)が震災後、150以上の自治体に行った地域防災計画の運用に関するヒアリング結果によると、「災害対応マニュアルに則した行動の浸透が十分に図れていない」「全体の状況把握や情報伝達がしにくい」という課題が浮き彫りになった。

 そこで同社は、スマートフォンやタブレット端末を活用した「初動支援キット」の開発に着手。28年から自治体向けに販売を始めた。

 同キットの実証実験には、旭市が協力した。市の担当者は「運用されれば大いに役立つ」と有効性を高く評価する。ただ、市は全職員分の端末購入費や、運用コストがかさむことなどを理由に、実験終了後の本格導入は見送った。

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 東日本大震災以降、全国の自治体は地域防災計画の見直しや津波避難訓練に取り組んでいる。一方で、地震防災学などを専門とする千葉科学大危機管理学部の藤本一雄教授(45)は、「マニュアル通りの訓練が多い。毎回、同じようなことを繰り返すばかりでは、従来の想定を超える被害をもたらした東日本大震災の教訓を生かすことはできない」と警鐘を鳴らす。

 その上で、従来の「シナリオ型」訓練を見直し、不測のトラブルなどを織り込む「ブラインド型」に移行することで、計画やマニュアルの不備を見つけ出し、改善すべきだと指摘する。いつ起きるか分からない次の災害に備え、試行錯誤は今後も続く。(城之内和義)

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【用語解説】日立システムズ「初動支援キット」

 被災自治体の地域防災計画の運用状況を分析し、災害発生時の職員の所属や役割に応じた指示が端末の画面に表示され、迅速な行動を手助けする。また、端末を通して職員の行動内容や避難所の受け入れ状況などが集約され、災害対策本部は組織全体の状況をリアルタイムで把握することができる。