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九州新幹線長崎ルートのフル規格化実現へ正念場 佐賀・長崎が手取り合い知恵を

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九州新幹線長崎ルートのフル規格化実現へ正念場 佐賀・長崎が手取り合い知恵を

 九州新幹線鹿児島ルートが全線開業し、12日で7年を迎えた。乗客は順調に伸び、生活や経済活動に不可欠な交通ルートに育った。一方、建設中の長崎ルートは、全線フル規格化やミニ新幹線も含め、建設費用や開通効果の再調査の結果が、3月にも報告される。全線フル規格化を求める地元関係者は、勝負の時期を迎えている。(高瀬真由子)

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 鹿児島は今年、明治維新150年の関連事業に沸く。NHK大河ドラマ「西郷どん」の放送も始まった。鹿児島市観光プロモーション課によると、観光客は順調に伸びているという。今年1月13日にオープンした大河ドラマ館の入館者は、10年前に放送された「篤姫」のドラマ館を上回っている。

 同課の奥真一課長は「新幹線の開通で、鹿児島を身近に感じてもらえるようになり、九州各地から日帰りで鹿児島に来る人も増えた。観光戦略には欠かせない」と語った。

 鹿児島ルートは平成16年に部分開業し、23年に全線が開業した。かつて4時間近くかかっていた博多-鹿児島中央を、最速1時間16分で結ぶ。JR九州によると、平成28年度の利用者数は、1日平均3万6千人で、21年度に比べ3・3倍となった。

 JR九州の青柳俊彦社長は2月の記者会見で「想定より多くのお客さまに利用されている。(南九州の)観光推進に、もっとお役に立てる」と述べた。

 赤字ローカル線を抱える同社の鉄道事業は、新幹線の収入が支えている。

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 長崎ルートは、平成34年度に暫定開業する。

 「暫定」とするのは、全体の整備方式が定まらず、新鳥栖-武雄温泉を在来線特急で、武雄温泉-長崎をフル規格の新幹線を使う「リレー方式」を導入するからだ。

 長崎ルートはもともと、在来線と新幹線の両方のレールを走ることができるフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)を国内で初めて導入する計画だった。ところが、昨年までの試験で、台車の車軸に摩耗が見つかり、FGTの導入時期が大幅に遅れることになった。

 これを機に、長崎や佐賀の一部では、鹿児島ルートと同じ全線フル規格整備を求める声が高まった。

 リレー方式やFGTに比べ、フル規格は時間短縮効果が大きいからだ。博多-長崎の所要時間をみると、現行の1時間48分に対し、リレー方式は1時間25分程度にしか縮まらない。フル規格であれば、1時間を切るとみられる。さらに、関西方面に向かう山陽新幹線への乗り入れも容易となる。

 昨年12月、沿線の佐賀県嬉野市で、フル規格実現へ機運を高めるシンポジウムが開かれた。佐賀県2市と長崎県3市の市長や、地元経済団体トップらが出席し、フル規格の必要性を発信することを確認した。

 こうした地元の声もあって国土交通省は、フル規格▽ミニ新幹線▽FGTの3方式で、建設費や投資効果を比較する調査を始めた。

 調査結果を踏まえ、与党の検討委員会が整備方式の結論を出す。フル規格に転換できるかの岐路といえる。

 シンポにも出席した嬉野市商工会の小原健史会長は「決定権を持つ国会議員に、目に見える形で訴えることが大事だ。要求のないところに、予算も政策もつかない。佐賀県と長崎県も手を取り合い、実現に向けた工夫をしてほしい」と訴えた。

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 フル規格化へのハードルは、佐賀県で生じる800億円の追加負担だ。山口祥義知事はこれまで、財政負担を理由に「フル規格は現実的ではない」との考えを、繰り返し示した。

 JR九州内にも「佐賀県の負担の問題を解消しないと、前に進まない」との声がある。

 調整が進まなければ、在来線と新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」が長期化する。時短効果は小さく、地域振興などへの貢献も小さくなる。

 国交省の調査で西九州地域の発展にはフル規格の新幹線が一番となれば、佐賀県の負担軽減に知恵を絞る必要がある。

 また、整備方式の結論を、できるだけ早く決めなければならない。

 鹿児島ルートは、平成3年に本格着工し、部分開業までに13年、全線開業までにさらに7年を要した。

 長期計画だけに、決定が伸びれば、自治体やJR九州は今後の見通しが立たない事態となる。長崎ルートは24年に着工し、34年度に暫定開業、FGTの本格導入を37年度としていた。結論を先延ばしにする余裕はない。