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【東日本大震災7年】防災と景観どう両立? 大洗の防潮堤4割完成も県と地元協議続く

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【東日本大震災7年】
防災と景観どう両立? 大洗の防潮堤4割完成も県と地元協議続く

 平成23年の東日本大震災で最大4メートルの津波に襲われた大洗町の海岸沿いで、防潮堤の整備が進んでいる。今月中に全体の4割が完成する見通しだが、観光と水産の街として発展してきた同町内では、防潮堤によって眺望や景観が損なわれると不安視する声も少なくない。防災と景観保全をどう両立させるのか、県と地元の間で協議が続いている。(上村茉由)

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 県は、数十年から百数十年に1度の頻度で発生が予想されるL1津波を約4・2メートルと想定。大洗サンビーチから同町宮下地区にかけて約4・3キロにわたり、防潮堤を海抜約4・5メートルになるよう整備する。

 県茨城港湾事務所大洗港区事業所によると、工事は26年8月に始まり、29年6月にはサンビーチの防潮堤約900メートルが完成した。大洗港区の観光施設が集まっている部分の約900メートルも今月中に完成する見込みだ。県は、32年度内の整備完了を目指しているが、宮下地区の約500メートルでは現在も地元との調整が続いている。

 宮下地区の護岸はすでに海抜約4・5メートルだが、県の計画では、高潮対策も兼ねて海抜約6メートルになるようにかさ上げする。歩道からの高さは約2・2メートルとなり、建物の1階や歩行者からは海が見えなくなってしまう。

 宮下地区を含む大洗海岸は景勝地で、「大洗県立自然公園」の一部でもある。宮下地区では海沿いに旅館やホテルが立ち並び、窓から太平洋を一望できるのが“売り”だ。岩礁に立つ「神磯鳥居」もフォトスポットとして人気を集めており、宮下地区町内会は、自然公園としての文化的価値や町全体のブランドイメージに影響が生じかねないと訴えている。

 町内会の一員で旅館「里海邸 金波楼本邸」の石井盛志代表は、32年度までの完成に固執せず、「安全と景観のバランスが取れるようにもっと時間をかけて議論すべきだ」と強調する。同町内会では、海沿いの家々がそれぞれ防潮対策を施すことを代替案とするよう検討を進めているという。同町まちづくり推進課の担当者は「防潮堤を作らないなら、避難計画などソフト面で住民や観光客の安全を守る対策を練っていく」としている。

 県はこれまでも、防潮堤の一部にアクリル板の窓を設置するなど、景観に配慮した対応策を講じている。大洗事業所の担当者は「地元が納得しなければ計画は進められないので、協議を続けていく」と話している。