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【被災地を歩く】みちのく潮風トレイル、拠点建設 「震災の記憶、ハイカーに伝承」

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【被災地を歩く】
みちのく潮風トレイル、拠点建設 「震災の記憶、ハイカーに伝承」

 みちのく潮風トレイル-。青森県八戸市から福島県相馬市までの900キロ超の一本道だ。長距離を歩いて旅する「ロングトレイル」向けに今もなお整備が行われているこの道の維持、管理などの拠点施設「名取トレイルセンター(仮称)」が名取市閖上地区に建設される。環境省東北地方環境事務所が先月18日、説明会を現地で開催した。

 ロングトレイルは欧米では旅の方法として根付いている。日本ではまだなじみは薄いが、長野県と新潟県を結ぶ信越トレイルが整備されるなど徐々に注目を集め始めている。

 ◆日本最長のコース

 整備中のみちのく潮風トレイルは日本最長を誇るトレイルコースになる。平成29年度は岩手県大槌町、宮城県気仙沼市などで8区間が開通。31年3月末には全線が開通する見通しだ。

 同トレイルは震災後、環境省の「グリーン復興プロジェクト」の一環として、25年に整備が始まった。26年にオープンした青森県の「種差(たねさし)海岸インフォメーションセンター」など、ハイカー向けに情報発信などを行う施設が青森、岩手、宮城の3県に計5カ所設置されている。

 ◆閖上に12月完成予定

 こうした施設の一大拠点が、東日本大震災で約800人が犠牲となった名取市の閖上地区の地にできる。完成予定は今年12月だ。

 「名取トレイルセンター」は、これまでの5カ所を束ねる拠点として建設される。ハイカーに必要な情報発信、物資供給に加え、地元住民同士や、地元住民とハイカーらが交流できる場としての役割も期待されている。環境省の同プロジェクト推進チーム広報担当、板橋真美さん(45)は「仙台空港に近いことなどを考慮して閖上に決めた。地元住民にも利用してもらって、震災の記憶をハイカーらに伝承する場としても活用してほしい」と話す。

 ◆「外国人らの集客鍵」

 この日行われた説明会には地域住民ら24人が参加。さまざまな意見が飛んだ。

 「外国人観光客を含めて、この地にどれだけ人を呼び込めるかが鍵。宿泊できるようにしたり、近くにある『サイクルスポーツセンター』と連携したイベントを開催したりする意見を出した」と話すのは会社員の斎藤睦さん(24)。同市増田の自営業、板橋宏さん(72)は「4月に小中一貫校として開校する『閖上小中学校』の子供たちが誇りを持てるよう『夢浜』『楽浜』といった言葉を施設名に入れたらどうか。震災の記憶を伝承する役割も持つべきだ」と話した。

 説明会の司会を務めた「NPO法人みちのくトレイルクラブ」の理事、相沢久美さん(48)は「歴史、文化、自然、そして震災を伝える道。歩いてこそ気がつく震災の傷跡などにも目を留めてほしい」と語った。

 被災地を歩く。それが、人々を呼び込み、震災の伝承につながるかどうか。建設される新施設が担うことになる役割が、その重要な鍵となりそうだ。(塔野岡剛)