産経ニュース

近江八景「唐崎の夜雨」で有名な唐崎の松、DNA次代に 衰弱で後継樹植栽

地方 地方

記事詳細

更新


近江八景「唐崎の夜雨」で有名な唐崎の松、DNA次代に 衰弱で後継樹植栽

 近江を代表する名勝「近江八景」の一つ、「唐崎の夜雨(やう)」で知られる唐崎神社(大津市唐崎)の松が衰弱していることを受け、後継樹の植栽が28日行われた。江戸期の絵師、歌川広重の浮世絵に描かれた名高い風景を継承させようという試みで、関係者は「松を育成する気持ちを引き継いでいきたい」と意気込む。

 唐崎神社を管理する日吉大社(同市坂本)によると、大津京遷都(667年)の翌年、奈良にいた神が松に降り立ったとの伝承がある。根元から分かれた2本の幹がそびえる「双幹立ち」が特徴で、豪壮な雰囲気を醸し出している。

 現在の松は記録上3代目で、明治20(1887)年ごろに植えられた。昭和36年の台風の影響で折れた枝の部分から腐食が進み、内部が空洞化。59年には南側の幹が枯れ、上部を切った。昨夏には樹皮が急速に灰色になるなど腐食が進んだため、枝の半分を除去するなどして保全を続けている。

 一方で、次代の松の育成に向けた準備も進められてきた。平成23年に日吉大社から松の管理を託された同市坂本の「辻井造園」の代表、辻井博行さん(48)は、病害虫対策などの保護活動を進めるかたわら、松ぼっくりを採集。衰弱が進んでいたため1年間で7個しか取れなかったが、種を取りだして発芽させ、別の場所で35本の後継樹候補を育成してきた。

 昨夏の3代目の衰弱を受け、辻井さんは35本の中から4代目にふさわしい双幹立ちで勢いのよい若木を選び、3代目の隣に植えることを決めた。

 辻井さんは「3代目は平成に入る前にすでに弱り切っていて、今生きているのが奇跡なくらい。つながれている命を次世代に引き継ぎたい」と話す。

 後継樹は高さ約2メートル。大正10年まで活躍した2代目と同じ、27メートルの高さまで育てることが目標。「100年単位の仕事になる」という。辻井さんは「人間より松の方が長生き。私たち人間も後継者にしっかり気持ちをつないでいき、多くの人の温かい気持ちを受けて育ってほしい」と話した。

 日吉大社の馬渕直樹宮司(64)は「いろいろな人の思いを受けてきた大切な松が順調に育つよう、祈りたい」と話した。