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あの人思い一針一針 坂井の女性、安島の「モッコ」復活 刺し子の技継承に奮闘

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あの人思い一針一針 坂井の女性、安島の「モッコ」復活 刺し子の技継承に奮闘

安島に移住し「モッコ」の美しさに魅せられた森岡千代子さん(中央)=福井県坂井市 安島に移住し「モッコ」の美しさに魅せられた森岡千代子さん(中央)=福井県坂井市

 海に出た男性を思い一針、一針刺す。補強や保温のため、普段着の和服に細かい針運びで幾何学模様を刺繍(ししゅう)した「モッコ」。戦後まで観光名所・東尋坊がある坂井市三国町安島の海女たちが守ってきた刺し子の技が、このほど地元女性の手で復活した。女性たちは「安島のDNAを残していきたい」と意気込んでいる。

 安島は、江戸から明治時代に多くの男性が北前船に乗り込んだ船乗りの町。一度乗船すると半年は戻れず、残った女性は海女として働きながら家庭を支えた。

 1ミリほどの緻密な縫い目が特徴のモッコは、1着作るのに1年以上かかる。坂井市の博物館「みくに龍翔館」によると、嫁入り道具の一つだったが、服が容易に手に入るようになり、技は次第に廃れていったという。

 モッコ復活の中心人物の1人が、平成13年に夫の転勤でドイツから安島に移住した森岡千代子さん(65)だ。龍翔館で偶然目にしたモッコの美しさに魅せられた。

 技を持つ海女を探したが、高齢化が進み指導できる人は見つからなかった。「復活は難しいだろう」と思いつつ28年10月、知人から譲り受けたモッコの切れ端を展示するギャラリーを自宅にオープン。訪れた海女さんが「家にもあるわ」と、柿の花に似た模様がびっしりと並ぶ100年以上前のモッコを持ってきた。

 その美しさにほれ込んだのが、美容師で刺繍が趣味の坂野上百恵さん(46)。2カ月間ギャラリーに通い詰め、虫眼鏡で縫い目を観察。28年末、ついに刺し方を解明した。

 森岡さんは「もう伝統を途絶えさせてはいけない」と、坂野上さんを先生に月1回有志で集まり、地域の祭りで使う法被に刺し子をすることに。図案は昔ながらのひし形や階段模様をベースに、赤や青のカラフルな糸を使う独自の工夫も加えた。昨年の祭りで町の男性たちに着てもらうと、大好評だった。

 現在は13人の女性が参加し、子育てや地元の話に花が咲く。森岡さんは「昔もこんな風におしゃべりしながら、夫や恋人に着せたいと思って作ったんだろう」と笑顔で語った。