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朝鮮人追悼碑訴訟 判決文検証 追悼式は「政治的行事」 群馬

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朝鮮人追悼碑訴訟 判決文検証 追悼式は「政治的行事」 群馬

 高崎市の県立公園「群馬の森」の朝鮮人追悼碑をめぐり、碑を設置した「追悼碑を守る会」が県を相手取り設置期間更新の不許可処分取り消しを求めた訴訟で、前橋地裁は「裁量権を逸脱した」として、県の処分を取り消した。設置期間更新の判断は再び大沢正明知事に委ねられ、碑の存続問題は振り出しに戻った。守る会が集会などで多用してきた「強制連行」の文言が鍵を握った訴訟で、前橋地裁は重要争点についてどう判断を下したのか。改めて判決文を検証する。 (吉原実)

 □「強制連行」発言 歴史認識を主張 

 ■争点(1) 設置許可条件は表現の自由を侵害したのか

 表現の自由をめぐる論争については、県側に軍配が上がった。

 守る会側は「政治的、宗教的行事および管理を行わない」という設置許可条件と、不許可処分そのものが表現の自由の侵害と訴えてきた。碑を「表現活動や思想伝達の手段」と位置づけ、条件は「規制範囲が漠然としている」と主張した。

 前橋地裁は碑を政治目的などで利用した場合、「紛争の原因になるなどして(中略)自由な利用が困難ないし不可能になることも想定される」と判断、条件には「合理性が認められる」と県側に理解を示した。

 さらに、表現の自由は制限を受けることもあるとした上で、条件外の表現は「何ら規制されるものではない」と守る会側の主張を退けた。

 また、守る会が碑を設置する前に、政府見解と異なることなどを理由に、碑文に「強制連行」の文言を使わないよう助言し、合意したとする県側の主張に沿った形で、前橋地裁は「強制連行」を含む発言が、「『政治的行事』にあたることは明らか」とし、規制範囲は明確であるとの見方を示した。

 ■争点(2) 政治的行事を行ったか否か

 前橋地裁は守る会に複数の政治的発言があったとし、追悼式を「政治的行事」と断定した。

 守る会側は、政治的発言があったとしても、「追悼式自体の目的が政治的な目的に変化するものではない」と主張していた。

 これに対しても、前橋地裁はいずれの発言も、守る会の事務局長や「関係団体」とされる朝鮮総連県本部の幹部によるものと指摘。発言の結果、「追悼式が歴史認識に関する主義主張を推進する集会として、死者を悼む目的を超えて、政治性を帯びることは否定できない」と一蹴し、設置許可条件に違反していると断じた。

 さらに前橋地裁は、碑文に「強制連行」の文言を使わないことで合意した経緯を根拠に、政治的発言を「追悼碑に関して『強制連行』の文言を使用し、歴史認識に関する主義主張を訴える発言」と定義。

 「政治的行事」の有無を裏付け、県側が不許可処分の理由として列挙した5つの「政治的発言」のうち、前橋地裁は3つを「政治的発言に該当するもの」と認定した。

 具体的には、平成17年4月23日に開催した追悼式での「強制連行の事実を訴え、正しい歴史認識を持てるようにしたい」という守る会事務局長の発言などだ。

 ■争点(3) 設置許可条件違反により、都市公園の機能を喪失したか

 県側は、設置許可条件への違反が確認されれば、即座に「住民全般の休息」など都市公園の効用が失われると主張してきた。これに対し、前橋地裁は論理の脆(もろ)さを鋭く指摘した。

 条件違反を確認したにもかかわらず、迅速な対応を取らなかったことを理由に、前橋地裁は「(県側が)直ちに追悼碑は都市公園の機能を喪失すると考えてはいなかった」と指摘。

 「政治的行事」が行われたとしても、「日韓、日朝の友好推進という追悼碑の機能を回復することもあり得る」と判断した。

 守る会側が、碑を継続して設置するために提示した3つの代替案についても、県側が十分に検討した形跡はなく、不許可処分は「裁量権を逸脱した」と結論づけた。