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【企業訪問 製茶編】前田金三郎商店(静岡市葵区茶町) お茶通じくつろぎ提供

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【企業訪問 製茶編】
前田金三郎商店(静岡市葵区茶町) お茶通じくつろぎ提供

 静岡市葵区茶町。その名の通り茶専門店や茶問屋が立ち並ぶ一角にある、ひときわ目立つ真っ白な外観の「茶町KINZABURO」。一見すると雑貨店や美容院のようだが、ここは創業100年の茶問屋「前田金三郎商店」の直営店だ。

 扉を開けると、入り口のショーケースにはお茶を使った菓子の数々。奥の陳列棚にはしゃれたパッケージの茶葉が何十種類も並ぶ。2階のカフェスペースでは各産地の静岡茶を10種類ほど自由に試飲でき、1階で購入したお菓子と好みの緑茶を味わいながら、のんびりした時間を過ごすことができる。

 JR静岡駅から徒歩20分。決して便利な立地ではないのに、開店から7年を経てなお、女性客がひっきりなしに足を運ぶ。「私たちはお茶を売るだけでなく、お茶を飲むことで得られるくつろぎの空間と時間、人と人とのつながりを売っている」と、前田冨佐男社長(58)は胸を張る。

 ◆“3つの間”に着眼

 時代に合わせて茶問屋を改革した先駆者として注目される前田さんが、実家に戻ったのは昭和60年。「そのころはまだ、茶業は安定していると思われていた」

 ところが、元号が平成になるころから、急須を使って茶葉でいれる煎茶(せんちゃ)に代わり、ペットボトル入り緑茶が市民権を得るようになった。ウーロン茶や紅茶を好む層も増えて消費が多様化し、茶葉の需要は下降線をたどり始めた。

 そんな中、衝撃を受けた出来事があった。思い立って参加した勉強会で、マーケティングの専門家から「急須で飲むお茶といえば○○」という質問に、全体の6割が「くつろぎ」「リラックス」と答えたと聞かされたのだ。「茶業者なら間違いなく『茶葉』や『静岡茶』と答える。でもそう答えたのは、800人中たった2人だった。消費者はお茶にくつろぎやリラックスを求めていたのだと気づかされた」

 では、どうすればくつろぎを提供できるのか。数年間考え続け、「空間、時間、人間のつながりという“3つの間”を売ろう」とのコンセプトに行き着いた。

 ◆菓子で心をつかむ

 お茶は主役ではなく、くつろぎが主役-。そのためにはお茶に合うおいしい菓子が欠かせない。しかし、茶問屋が片手間につくる菓子では消費者の心をとらえることはできない。それなら本格的に菓子製造に参入しようと、完全に自社製造できるよう設備を整えた。茶問屋の強みを生かして菓子にもお茶を使おうと、静岡産の抹茶入りクリームを開発した。茶産地ごとにクリームの味が異なることにも気づき、菓子にはそれぞれ産地名をつけた。これが、同社を象徴する菓子「茶っふる」だ。

 さらに、「くつろぎの空間」を提供すべく、茶店の2階をカフェに改装。畳スペースと静岡茶の試飲コーナー、一人客が気兼ねなく入店できる「お一人様席」も設け、茶問屋ならではの小売店とカフェを併設した「茶町KINZABURO」が誕生した。今では同社は、茶葉以外の菓子やカフェ部門の売り上げが全体の3分の1を占めるまでになったという。

 それでも、前田社長は「うちはあくまでも茶問屋」と、静岡茶の伝道師としての矜持(きょうじ)を失ってはいない。お茶を使ったオリジナル菓子と、おしゃれでゆっくりできるカフェスペース…。そういった入り口から、静岡茶の世界に足を踏み入れてもらえればと願っている。(田中万紀)

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 ■イチ押し! 「茶っふる」

 静岡茶の各産地の抹茶を練り込んだクリームをふわふわのワッフル生地で包んだ同社のオリジナル菓子「茶っふる」は、前田社長が、幼い頃に母が家で焼いてくれたワッフルを思い出して開発したという自慢の一品だ。

 「天竜」は渋く、「岡部」はまろやか。「川根」は香り高く、冬季限定の「森町」は香ばしい…。同じ静岡茶でも産地ごとに異なる抹茶の風味を、クリームに練り込むことでしっかりと感じることができる。

 各茶産地の抹茶クリーム入りのほか、北海道産クリームチーズを使った「レアチーズ」やイチゴクリーム入りなどのバリエーションがあり、店頭には常時10種類以上が並ぶ。

 すべて店内製造で日持ちがしないため、「茶町KINZABURO」とJR静岡駅売店のみの販売。1個124~172円。