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【雇用のプロ安藤政明の一筆両断】解決しない若手不足 少数精鋭経営のすすめ

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【雇用のプロ安藤政明の一筆両断】
解決しない若手不足 少数精鋭経営のすすめ

 先月30日、総務省統計局は、労働力調査の平成29年平均結果を公表しました。完全失業率は2・8%。3%を割ったのは、平成6年以来23年ぶりのことです。ところで、完全失業率には、勤務地や年齢などの条件面のミスマッチによる数字が含まれます。ミスマッチ失業率は、日銀の推計で3・0%とされています。完全失業率がミスマッチ失業率を下回るということは、働く意思と能力があれば全員が就業している状態ということになってしまいます。この状態を「完全雇用」といいます。多くの企業・事業所が「採用したいのに、できない」と悩んでいますが、率直に数字に出ています。

 同じ先月30日に厚生労働省が公表した29年平均の有効求人倍率は1・50倍でした。有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)に登録されている求人数を、求職者数で割った数字です。1倍を上回るというのは、「売り手市場」の状態です。しかも1・50倍という数値は、なんと44年ぶりの高さです。求人に対する実際の就職者数の割合(充足率)はわずか15・2%と、求人100件中約85件は「誰も採用できなかった」という結果です。この充足率の低さは、統計を取り始めた昭和38年以来最低記録となりました。

 これから就職する側にとっては、バブル期並みの売り手市場です。人材を求める事業所にとっては極めて悩ましい時代です。しかし、日本経済がバブル期並みかというと全く違います。景気回復傾向とはされていますが、好景気の実感がないのです。それなのに、ここまで人手不足となっている理由は、人口問題だといえます。

 単純に、各年齢の出生数だけ見てもわかります(昨年の満年齢で表示します)。ちょうど引退世代である65歳~70歳の世代は、毎年200万人以上生まれていました。多くの事業所で、多くの引退者が続出していると思われます。一方、入ってくるべき就職世代の18歳~25歳の出生数は、110万人~120万人台です。ざっくりですが、引退世代の半分しかいないのです。しかも景気回復傾向で、大企業などの採用意欲が高く、なかなか中小企業には回ってきません…。

 65歳未満の人口は、アラフォー世代以上が主力です。丙午(ひのえうま)などの例外を除き、年160万人以上生まれた世代です。特に団塊ジュニア世代とされる43歳~46歳は毎年200万人以上です。これに対し、37歳以下の世代は150万人台以下で、平成生まれの28歳以下は120万人台以下となります。

 38歳~64歳の出生数の単純合計数は約4800万人ですが、23歳~37歳はわずか2千万人です。アラフォー以上の48人に対し、それより下の世代は20人しかいない計算になります。この数少ない若い世代を、多くの事業所が狙っています。求人を出しても、応募が少ない上、アラフォー以上しかこないわけです。事業者にとっては困った事態です。

 いずれ改善するかというと真逆で、2歳~12歳の出生数は110万人を下回り、さらに昨年と一昨年に生まれた子は100万人を切ってしまいました。若手人口の減少傾向は、これからもずっと続くのです。

 その結果、人材確保のため、採用時の賃金が大幅に引き上げられる傾向となりました。最近の求人情報を見ると、数年前では考えられなかった賃金水準が提示されています。ここ数年の最低賃金の大幅な上昇も、これを後押ししています。安倍首相は、賃上げ3%をお願いしたいなんて言っています。周囲の事業所が賃上げすれば、採用できないだけでなく人材流出にもつながりかねません。

 少し冷静に考えることも必要です。仮に利益が3%以上増加していれば、賃金も3%引き上げて良さそうです。しかし、将来利益が減少したり赤字になっても、下げられないのが賃金です。利益配分という趣旨なら、賞与などで対応すべきです。また、人材確保のため、高い賃金で採用すること自体がリスクを伴います。仮に採用した者が通常レベルの仕事すらできなかったとしても、賃金は引き下げられませんし、簡単に解雇するわけにもいきません。

 平成初期のバブル期の大量採用と、バブル崩壊後のリストラの嵐と相次ぐ事業所破綻が脳裏をよぎります。結果、「失われた20年」となり、誰も幸せになりませんでした。これからはAI(人工知能)の活用などで、人間の仕事自体が減っていくことも予想されています。従業員を多く抱えること自体が、リスクとなりかねないのです。そうなる前に、少数精鋭的な舵取りに切り替えることも、検討の価値があるかもしれません。

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【プロフィル】安藤政明

 あんどう・まさあき 昭和42年、鹿児島市生まれ。熊本県立済々黌高、西南学院大、中央大卒。平成10年に安藤社会保険労務士事務所開設。武道と神社参拝、そして日本を愛する労働法専門家として経営側の立場で雇用問題に取り組んできた。労働判例研究会、リスク法務実務研究会主宰。社労士会労働紛争解決センターあっせん委員。警固神社清掃奉仕団団長。