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【茨城県民の警察官 受章者の横顔】那珂署刑事課鑑識係長・斎藤和彦警部補

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【茨城県民の警察官 受章者の横顔】
那珂署刑事課鑑識係長・斎藤和彦警部補

 ■被害者と犯人の立場に

 「身に余る光栄で、気が引き締まる思い」。受章の率直な気持ちをこう語った。勤続35年。30年余りを刑事部門で勤務し、鑑識係としてのキャリアは約28年に上る。

 初任地の日立署時代、上司に勧められ、鑑識の道を選んだ。事件捜査の経験は皆無だったが、関東管区警察学校(東京都)に通って朝から晩まで鑑識の勉強に明け暮れた。「周りは捜査の経験者ばかり。自分はついていくのがやっとだった」と振り返る。

 その後、鑑識技術の検定に合格し、捜査員としての第一歩を踏み出した。30年近く鑑識の仕事を続けられた理由を尋ねると、「こつこつとやるのが性に合っていた。当時の上司に感謝です」と笑った。

 大切にしているのは「被害者と犯人の両方の立場に立つこと」という。「自分や家族が事件に巻き込まれたら、どれほどつらいかと思えば厳しい鑑識活動も続けられる」と語り、「『犯人を絶対に捕まえる』という気持ちが何より大切」と穏やかな語り口の中に捜査への情熱をうかがわせる。

 一方で、証拠がなかなか見つからない現場もある。その場合、「自分が犯人ならどう動くか」を考える。とことん犯人の行動をシミュレーションすることで思わぬところから重要な証拠が見つかることがあるという。

 昨年9月、13年にわたる捜査で容疑者が逮捕された平成16年の茨城大女子学生殺害事件でも、発生直後に現場に駆けつけ、周辺の鑑識作業に当たった。「被害者は帰ってこないが、少しでも遺族の心が救われればうれしい。迷宮入りしなくて本当に良かった」と感慨深げに話した。

 昼夜を問わない鑑識の仕事を支えてくれたのは、妻の里香さんら家族の存在だ。家族で出かける予定の日に呼び出しがかかることもあったが、「妻がしっかり家を守ってくれた」という。「『今までありがとう』と伝えたい」と語ったが、「面と向かっては言えないな」と照れ笑いを浮かべた。

 現在は後進の育成にも尽力している。科学技術やデジタル機器が進歩を遂げたため、現場の写真撮影や指紋採取にかつてほど熟練の技は求められなくなったが、「鑑識の専門家に求められるのは証拠を見つけ出す着眼点だ。自分の経験を少しでも後輩たちに伝えていきたい」と語る。その目には、捜査を支え続けてきた自負がみなぎっていた。

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【プロフィル】斎藤和彦

 さいとう・かずひこ 53歳。大子町出身。昭和57年4月に茨城県警察官を拝命。日立署、筑波学園署(現つくば中央署)、機動捜査隊、境署、県警本部鑑識課、水戸署、古河署などを経て平成26年4月から現職。家族は妻と1男2女。