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【長崎県名誉県民 松尾敏男展】(4)「長崎旅情」 故郷への想い、そして恩返し

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【長崎県名誉県民 松尾敏男展】
(4)「長崎旅情」 故郷への想い、そして恩返し

「長崎旅情」(2014年、長崎県美術館) 「長崎旅情」(2014年、長崎県美術館)

 松尾敏男には晩年、大きな心残りがあった。故郷長崎を一度も描いたことがなかったのだ。常々描きたい気持ちはあったが、故郷ゆえに何を描くべきか迷いがあった。しかし平成25年に長崎県より名誉県民の称号を受けたことで迷いが晴れた。「誰もが知る長崎の良さを描いてみよう」という考えに行き着く。そして選んだのが、長崎市の中心街を見渡せる稲佐山からの夜景であった。

 松尾は制作にあたり、点々とする明かりを描くことに腐心した。そのもとで人々が生活を営んでいることを念頭に、一つ一つを丁寧に描き込んでいった。つまり本作は風景画ながらも、テーマは人間の生の営みなのである。

 あえて「旅情」と題したのは、3歳までしか過ごしていない故郷との微妙な心理的距離感をぬぐえなかったからに他ならない。それにもかかわらず長崎県民に認めてもらえたことに対する、松尾なりの故郷への恩返しとして本作は描かれたのだろう。(長崎県美術館 学芸員・森園敦)

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 「長崎県名誉県民 松尾敏男展」は3月11日まで、長崎県美術館(長崎市出島町)で開催。