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「戦争に翻弄された青春」 大林監督、最新作「花筐」語る 広島

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「戦争に翻弄された青春」 大林監督、最新作「花筐」語る 広島

 先月80歳の誕生日を迎えた尾道市出身の大林宣彦監督の作品を特集上映する「尾道映画祭2018」が23~25日、同市で開催される。最新作で、太平洋戦争直前の若者たちの青春を描いた群像劇「花筐(はながたみ)/HANAGATAMI」も地元初上映。商業映画監督としてのデビュー作「HOUSE/ハウス」(昭和52年)以前に大林監督が脚本を書いていたといい、平成29年「キネマ旬報ベスト・テン」邦画部門2位に輝いた話題作だ。映画祭には大林監督も出席する。

 花筐は、作家・檀一雄の同名小説が原作。「映画化は終生の夢でした。40年前には叶(かな)わなかったが、今になってついに“旬”の時期が訪れた」。映画祭を前に大林監督は大阪市内で満足げに語った。

 昭和16年春、17歳の俊彦(窪塚俊介さん)は、アムステルダムで暮らす両親の元を離れ、叔母(常盤貴子さん)のいる佐賀県唐津(からつ)市の家へ身を寄せていた。新しい学校の同級生は皆、個性的でそれぞれの青春を謳歌(おうか)していた。だが、開戦の日は刻々と近づき、俊彦たちの人生も巻き込まれていく…。

 撮影開始直前にガンが見つかったが、唐津市内でロケを敢行。このとき、医師から余命3カ月と宣告されたという。だが、治療を続けながら映画を完成させ、各地の上映会で元気な姿を見せている。

 戦争がテーマだが、戦闘場面は一切描かれない。「俊彦たちのように、かつて日本には戦争に青春を翻弄された人たちがいたことを今の若者に伝えたかった。それが戦争を知る最後の世代となった私たち映画監督の責務だと思う」と大林監督は語る。

 戦争を描きながらも大林監督が今作へ込めたメッセージは決して暗くない。必死に生きようともがく俊彦たち若者のエネルギーがスクリーンからあふれ出る。「戦争に翻弄された先人の放蕩無頼(ほうとうぶらい)にも見える青春は生への覚悟に満ちていた。その葛藤や痛みを後世の人たちに実感してほしい」と大林監督は期待を込めた。(戸津井康之)